以前にも、イランとサウジアラビアとの関係が、危険性を帯びてきていることをお伝えしたが、最近になって、ますますその傾向が、強くなってきているようだ。
この裏には、幾つかの原因があると思われる。第一に、サウジアラビア国内でシーア派教徒が差別されていることや、イラン人がサウジアラビアで、不明になっているという問題だ。
これまで、イランはサウジアラビアに対し、シーア派に対する差別の撤廃を、呼びかけてきていたし、不明になったイラン人についても、サウジアラビア政府に対し、調査を強く求めている。
イランがサウジアラビアを、敵視するに至っている原因のひとつには、イラク問題もある。サウジアラビア人がイラクで、シーア派に敵対する活動に参加しており、多数のイラク人シーア派教徒が、犠牲になったことを、取り上げている。
サウジアラビアにしてみれば、人口的に自国よりも多い隣国は、常に仮想敵国であろう。その第一候補である、イランは別にしても、サウジアラビアにとって、イラクは重大な脅威、となりうる可能性を秘めた国家だ。
そのイラクが、シーア派教徒によって統治されるようになれば、イラクはイランとの関係を強め、サウジアラビアに対し、直接間接圧力をかけてくることが、懸念されよう。
したがって、イランが非難しているように、サウジアラビアが自国民を、イラクの反シーア・テロ活動に送り出しても(黙認)、何ら不思議はあるまい。
加えて、イエメンでの内戦が、原因のもう一つになっているようだ。イランの非難によれば、イエメン政府はサウジアラビア政府と軍の支援を受け、イエメン北部に居住するシーア派(ザイデイ派)の部族である、アルホウシ族に対する、軍事攻撃を行っているということだ。
この内戦をめぐっては、イエメン政府も、イランがアルホウシ族を支援している、と非難している。つまり、双方の主張が正しいのであれば、イエメン政府はサウジアラビア政府が支援し、アルホウシ族にはイランが支援を送っているということだ。(イランとサウジアラビアとの代理戦争の様相を呈している)
最近、イランの保守派アヤトラのマカーレム・シラーズィ師は、サウジアラビアがアルカーイダや、世俗派のバアス党員を支援し、テロリストをイラクに送りこみ、イラクのシーア派教徒殺害を、実行していると非難した。
同時に、マカーレム・シラーズイ師はサウジアラビアが、イスラエルと結託して、イスラム教徒の分裂と、対立を生み出しているとも非難している
このように状況を追いかけてみると、どうやら、イランとサウジアラビアは、湾岸地域における覇権争いを、始めているということのようだ。そして、その具体的な現象が、イラクやイエメンなどで、表面化してきている、ということなのであろう。