だいぶ落ち着きを見せていたような感じだった、イラン国内状況は相も変わらず、不安定さを留めているようだ。
元大統領だったハタミ師が、現在のアハマド・ネジャド体制を、ファシストであり全体主義だ、と激しく非難したことが報じられた。ハタミ師によれば、現体制は反体制派の人士を侮辱し、公職から追放しているということだ。
以前にも書いたように、イランでは反体制派の学者たちが、その職から追放される不安を抱いている。それは、新学年度の授業内容に関する打ち合わせが、大学側から声がかかっていないということだ。
保守派の学者たちの間では、非宗教的科目(芸術や文学そして社会学など)は、必要ないということのようだ。ハメネイ師もこの点については「イランはいまソフト・ウオーに巻き込まれている。」と語り、間接的にではあるが、非宗教科目の担当教授たちが、イラン国家の敵であるかのような、表現を行っている。
イランでは改革派と言われる、ハタミ師やムサヴィ氏の活動に対する規制が、次第に厳しさを増しているようだ。例年であれば、ラマダン月は宗教的な行事が、目白押ししているはずなのだが、集会に対する規制が厳しくなっている。
そればかりか、エフタール(一日の断食を終えた後の食事会)開催への規制や妨害、集団での礼拝についても、同様の規制があるようだ。
ラマダン月が終わった翌日は、イードルフィトルの集団礼拝が、大々的に開催されるのが普通だが、今年は大モスクでの開催ではなく、小規模モスクでの分散型のみが、許可されているようだ。
それは、ハタミ師やカロウビ氏といった、改革派の学者たちの演説を、阻止するためであろう。各地で予定されていたハタミ師の講演会も、治安部からの圧力で、軒並みにキャンセルになっているようだ。
そこで残された手段は、大衆による反政府の意思表示、ということになるが、ムサヴィ氏は夜中の「アッラーフ・アクバル運動」を、継続するようイラン国民に、訴えている。
これは夜中に屋上に上って、アッラーフ・アクバル(アッラーは偉大なり)と叫ぶ運動であり、政府に対する反対意思の表明になっている。このアッラーフ・アクバル運動に対しては、今のところ政府側も、規制のしようがない、ということであろうか。
ムサヴィ氏はまた、現在の反政府運動を政治運動レベルではなく、社会運動のレベルにまで、引き上げていくべきだとも訴えている。果たして、アハマド・ネジャド大統領側のファシズムが先行して、イラン国民を抑え込めるのか。
はたまた、反政府側改革派がイラン国民を巻き込んだ、大衆運動を盛り上げて勝利することが出来るのか、イランは今、将来がかかっている分岐点に、迫っているということであろう。