オスマン帝国時代に起こった、オスマン帝国側によるアルメニア人虐殺問題(トルコ側は否定)で、トルコとアルメニアは隣接しながらも、国境を閉鎖したままであり、アルメニアが1991年にソビエトの分裂により、独立を果たしたにもかかわらず、国交正常化がなされないままできていた。
しかし、トルコのダブトール外相の努力により、トルコとアルメニアの交渉が続けられ、国交正常化に関する基本的合意が成立した。これは、画期的な出来事であろう。その成果が、どのようなメリットを今後、両国にもたらすか計り知れない。
同時に、このトルコとアルメニアの関係改善は、トルコとアゼルバイジャンの関係にも、影響を与えてこよう。なぜならば、アゼルバイジャンはアルメニアとの間に、ナゴルノカラバフ問題を抱えているからだ。これまでは、トルコがアゼルバイジャン側を支持し、アルメニアとの国境を、1993年以来閉鎖していた。
トルコとアルメニアの、今回の合意について、当然のことながらアゼルバイジャンは、大きな関心を持って分析を始めている。しかし、それがアゼルバイジャンとトルコとの関係に、決定的な悪影響を及ぼすとは考えられない。
それは、ナゴルノカラバフ問題をどう解決するかということを、トルコが念頭に置かずに、アルメニアとの関係を正常化したとは、思えないからだ。段階的に、トルコはアルメニアとアゼルバイジャンとの、関係正常化に向けて、働き掛けていくのではないかと思われる。
今回の、トルコとアルメニアの関係正常化を受け、両国の国境は、今後2カ月以内に開かれる見通しだし、両国は7週間以内に、外交機関を設置する方向で、協議を進めていく方針だ。
今回、トルコがアルメニアとの、国交正常化に動いた裏には、カスピ海周辺諸国のエネルギー資源の、円滑な輸送があったのであろう。アゼルバイジャンからアルメニアを経由して、中央アジアの石油やガス・エネルギーが、トルコに移送されるようになれば、消費地であるヨーロッパにとっても、好都合なことであろう。
これまで、トルコが進めてきたナブッコ・パイプライン計画も、より一層前進するものと思われる。そのなかでは、トルコがどこまでアゼルバイジャンとアルメニアの領土問題(ナゴルノカラバフ問題)を、解決していけるか、ということも大きな課題であろう。
トルコとアルメニアに横たわる、アルメニア人虐殺については、学術レベルでの、中立的な歴史検討が、両国学者たちによって、進められるのではないか。既にその提案は、トルコ側からアルメニア側に対して、行われている。つまり、トルコもアルメニアも、アゼルバイジャンも、実をとる方向で大人の対応を、始めたということであろ。