アラビア半島の東北端に位置する、アラブ首長国連邦で重大な決定が下された。それは数千人のパレスチナ人を、同国から追放する決定というものだ。これは、内務省の判断によるもので、理由は国内の治安維持のためということだ。
アラブ首長国連邦には20年以上前から、移住してきたパレスチナ人が、あらゆる分野で、仕事に携わっているが、今回はそのなかの教員が、一つの主要なターゲットになったようだ。
現在、パレスチナ人教員のうち、350人が追放対象になっており、その後任教員には、アラブ首長国連邦国民がなる予定だ。この決定は、パレスチナ人教員に、年度末の解雇という形で、教育省から言い渡されている。
これらのパレスチナ人教員が、これまで担当してきた科目は、アラビア語、英語、数学ということだ。
パレスチナ人の団体は、この政府の決定を不満とし、アラブ首長国連邦の大統領であり、アブダビの首長でもあるアール・ナヒヤーン氏に、決定の撤回を求める嘆願書を送った。
問題は、アラブ首長国連邦が下した今回の決定を、他の湾岸諸国政府が真似ないかということだ。湾岸各国はいま、テロの脅威にさらされており、外国人居住者の、誰がテロを起こすか分からないという、不安のなかにいるのだ。
アラブ首長国連邦にしてみれば、テロの不安ということに加え、ドバイの景気の著しい後退もまた、今回の決定の裏にあるのではないか。パレスチナのマハムード・アッバース議長は、もし数千人のパレスチナ人が、アラブ首長国連邦から追放されることになるのであれば、その対応策を考えねばなるまい。
しかし、彼らパレスチナ人移住者を、受け入れてくれるのは、ヨルダンだけではないのか。ヨルダンが受け入れるのは、パレスチナ人の湾岸諸国への移住者や出稼ぎ者のほとんどが、ヨルダンのパスポートを所持しているからだ。
このことが現実化した場合、ヨルダンでは湾岸戦争後に起こったと同じような、帰還者向けの住宅ブームが起こるかもしれない。しかし、そのことはヨルダンの居住者に占める、パレスチナ人の割合が、さらに増えることであり、ヨルダン王家にとっては、大きな不安材料でもあろう。