A・ネジャド大統領の新内閣に不安

2009年9月 4日

 散々もめたイランの新大統領就任から、しばらく時間が経ち、やっと新内閣が、議会で承認を得たようだ。それは、全員ではなく、あくまでも大半の閣僚が、承認されたということであり、いまだに、アハマド・ネジャド大統領の組閣に、は議会側から不満が出ている。

 この新内閣を見ていて、以前から気になっていたことが、その懸念が次第に現実味を帯びてきているような、気がしてならない。それは、アハマド・ネジャド大統領の暴走の懸念だ。 

 以前に、副大統領のポジションにマシャイ氏を推薦し、ハメネイ師から強い反発を受けてなお、アハマド・ネジャド大統領は彼を副大統領に就けようと思ったが、最終的にはハメネイ師の意向を受け入れざるを得ず、マシャイ氏を副大統領にすることを辞退した形で、彼の副大統領登用を、アハマド・ネジャド大統領は断念している。しかし、このマシャイ氏はその後、しかるべきポジションを与えられ優遇されている。 

 今回の組閣のなかで、女性3人が閣僚入りしたこと、は別に驚きはしない。政権第二期ともなり、女性を入れる自由を得た、ということであろうか。あるいは、国民の人気取りということであろうか。いずれにしろ、この3人の女性閣僚が、イランの国政を運営していく上で、大きな影響力を持つとは思えない。

 驚いたのは、革命防衛隊のメンバーが7人も、閣僚入りしたことだ。以前、アハマド・ネジャド大統領が革命防衛隊や、バシジの支持を受けるようになれば、彼はイラン国内で実質的に、最高の権力者になる。そうなった場合、彼はヒトラーのような独裁的な、政治を行っていくのではないか、という懸念を書いたが、まさに、そうなるのではないかと思われてならない。

 一般的な説明では、多数の革命防衛隊メンバーの閣僚への登用は、この前の反政府デモ鎮圧への、評価によるということだが、それほど単純な理由ではないのではないか。アハマド・ネジャド大統領は次のステップを、既に考えているのではないか。

 そして、その次のステップとは、相当強硬な政治を行う、ということではないのか。国防大臣に就任したアハマド・バヒデイ氏、は革命防衛隊出身であり、アルゼンチンで起こったユダヤ施設爆破の、首謀者だということだ。インターポールの指名手配者を閣僚、しかも国防省につけるということは、力の政治を行うということの、内外への意志表示なのではないか。

 今回の組閣が、最終的にアハマド・ネジャド大統領の意向に、ほぼ沿うものになった後は、ハメネイ師が何を言っても、アハマド・ネジャド大統領は聞き入れなくなるかもしれない。そうなったときは、反政府側にいたラフサンジャニ師、ムサヴィ氏、カロウビ師などは、居場所がなくなるばかりではなく、逮捕、投獄、あるいは処刑されることも、ありうるのではないか。そうならないことを祈るばかりだ。