アメリカ政府は近く開催される、国連会議の折に、ロシアに対し東ヨーロッパに配備を計画していた、イランや北朝鮮のミサイル攻撃に対抗する、ミサイル防衛システムの配備場所を、イスラエルやトルコに、変更する意向を伝えるようだ。
これまで、アメリカはチェコやポーランドに、ミサイル防衛システムを配備することを、希望していたが、ロシアが強く反対していたために、なかなか、チェコやポーランドとの交渉が、うまく進んでいなかった。
これ以外にも、ウクライナやグルジアへの、配備も検討されたが、最も安全な配備先として、イスラエルとトルコを、最終的に選択したようだ。
このアメリカの進めようとしている、ミサイル防衛システムの配備は、イランと北朝鮮のミサイル攻撃から、東ヨーロッパ諸国を守るという、ふれ込みになってはいるが、本音はロシアの再度の、東ヨーロッパへの台頭を押さえることに、目的があるのであろう。だからこそ、ロシアはこのミサイル防衛システム配備に、強く反対していたのであろう。
もし、トルコがアメリカの要請を受け入れて、ミサイル防衛システムの自国内配備を受け入れた場合、問題はイランとトルコの関係が、今後どうなっていくのかだ。現段階では、トルコはナブッコ・パイプラインの問題で、イランとの良好な関係が、非情に重要になっている。
イラン向けのミサイル防衛システムを、自国内に受け入れることは、少なからぬ影響を、イラン・トルコ関係に及ぼそう。あるいは、アメリカは現在反対している、ナブッコ・パイプライン計画に、イランを引き込むことに、ミサイル防衛システムの配備と交換に、賛成するのであろうか。
イスラエルは既に、自国をアメリカが防衛の、前線基地として使うことに、不満を述べている。そうなれば、イスラエルはヨルダン川西岸地区での入植地拡大を、交換条件としてアメリカに要求することになろうし、それ以上の交換条件も付けよう。
そうなれば、アメリカのオバマ大統領が唱えている、中東和平推進は頓挫してしまうことになろう。その結果、アラブ諸国はオバマ政権に対する、信頼を失うのではないか。こう推測してみると、ミサイル防衛システムの中東配備は、今後、種々の新たな問題を生み出しそうだ。