イスラム教の宗教学者のなかに、サッカーの大フアンがいるのだろうか。エジプトのイスラム法最高機関ダール・ル・エフターは、9月24日から始まる世界サッカー大会に向けて、自国選手が体力を温存できるように、断食の義務を免除するという判断を下した。
これは、世界大会に向けたトレーニングが、絶対必要だからという配慮からであったろう。サッカーの試合は、別に戦争ではないので、断食を免除されるという、イスラム法上の正当性は、成立しないのだが。
日本人のような、宗教心の薄い国民からすれば、サッカーの試合が無くとも、1カ月にも及ぶ断食はきついと感じ、当然このダール・ル・エフターの宗教裁定(?)を、歓迎すると思われるのだが、エジプトの場合はそうでもなかった。
エジプトのサッカー協会のスポークスマンである、アラーア・アブドルアジーズ氏の語るところによれば、選手たちは断食免除を、受け入れないということだ。
これには、宗教権威者たちが肩透かしを、食らったということであろうか。選手たちは断食をしながらの練習の苦しさよりも、アッラーの命令どおりに断食に耐えて練習した方が、勝利の可能性が高いと判断したのであろう。
イスラム教には「アッラーは自ら勝利を招く者を愛でる」という教えがある。