ハメネイ師のご寵愛はA・ネジャドからラリジャニへ?

2009年8月21日

 6月の選挙で勝利したアハマド・ネジャド氏は、大統領宣誓を終えた後、新しい閣僚名簿を発表した。その新閣僚名簿のポイントは、3人の女性を閣僚に加えたということだった。
 しかし、この新閣僚名簿に対し、イラン国内の各派から、クレームが付いている。まず、最初にクレームを付けたのは、イラン議会議員たちだった。彼らは経験不足の者を、閣僚として登用することは、問題があるというものだった。
 確かに、女性閣僚のなかにも、何故大臣にふさわしいのか、疑問が沸く人もいた。そこで、このアハマド・ネジャド大統領が発表した閣僚人事は、彼に対する忠誠度の高さで、決められたものであり、個人の経験や能力をもとにしたものではない、という批判が出始めた。
 ある閣僚は若すぎ、しかも知識不足だと批判され、また他の閣僚は、担当する分野の専門知識に欠ける、と指摘されている。国会議長のラリジャニ氏に至っては、もっと厳しい意見を述べ、今回の閣僚人事を批判している。彼は「閣僚ポストは、訓練の場ではない。」と語っているのだ、つまり、新閣僚の多くが経験のない、素人だと言っているわけだ。
国会議員のアハマド・タバコリ氏は「情報に携わった経験のない者が、なんで情報大臣に選任されるのか。」と批判している。この情報大臣のポストに就任することになったのは、ヘイダル・モスレヒ氏だが、このポストは非常に重要だ、なぜならば情報大臣のポストは、イラン国内外の情報を、完全に牛耳ることになるからだ。
情報大臣が、アハマド・ネジャド大統領の側近であることは、今後の大統領の立場を強化するということでもある。そのことはイラン国民の多くと、議員の全てが十分わかっていよう。そこで気になるのは、以下のような点だ。
:誰が国会議員にアハマド・ネジャド大統領の人事に反対させたのか?
:何故ラリジャニ国会議長がアハマド・ネジャド大統領の人事に口を挟み非難したのか?
:何故アハマド・ネジャド大統領は非難を受けることを覚悟で今回の人事を決めたのか?
これらの疑問点を考えると、大統領選挙でイラン国内が不安定化した状況は、いまだに落ち着いていないということだ。そして、イラン国内の権力をめぐる闘いは、次第に深く、しかも、大きくなっているのではないかということだ。 
今後のイランは以下のようなシナリオのうちの、いずれかに向かうのではないか。
:アハマド・ネジャド大統領が全権を掌握し、ヒトラーのような絶対権力を握る存在に変貌していく。この場合、宗教的最高権力者は存在しなくなる。
:ハメネイ師を支える保守派が、アハマド・ネジャド大統領を追放する。その結果、ラリジャニ氏が後任の大統領となり、今後も神権体制が維持される。
:ハメネイ師もアハマド・ネジャド大統領も、権力の座から追放され、民主体制が萌芽し始める。
 イスラム世界では、こうした予測をした場合「アッラーフ・アーラム=アッラーのみが真実を知る」というのが常だ。