来年のエジプトの選挙はボイコットされるか

2009年8月19日

 エジプトでは、ムバーラク大統領の高齢化から、後継者問題が持ち上がって久しい。そのためには、エジプト国内の権力機構が、強化されなければならないというのは、ムバーラク大統領の考えであると同時に、与党の考えのようだ。
 そうしたなかでは、エジプトの国会を与党で固めることが、まず、第一と考えられている。先に行われた国会議員選挙では、自由選挙の結果、ムスリム同胞団のメンバーが、圧倒的な当選数を記録したために、第二次選挙では、完全にムスリム同胞団を締め出してのものとなり、結果は与党が圧勝する、ということになった。
 こうした経緯を踏まえ、来年に予定される選挙を前に、政府はいかにして野党勢力の台頭を、抑えるかということに、知恵を絞っているようだ。先日、新ガド党(ガド・ガデード)党が選挙を前に、正式な政党として、政府に登録を試みたところ却下された。
 この新ガド党とは、ムスリム同胞団の流れをくむ党だが、ムスリムだけではなく、クリスチャン(コプト教徒)も加えるという、新たな方針を打ち出している。政府は新ガド党の設立の必要性を認めないとし、正式な政党として受け付けなかった。
 この後、もう一つの人気政党であるキファーヤ党(ムバーラクはもう十分役割を果たしたという意味)が、次回選挙のボイコットを宣言した。現行法では、選挙が公正に行われないからだとするものだ。同党の党首は、つい最近まで刑務所に入れられていたが、政治活動をしないという念書を取られ、出獄できている。
 キファーヤ党は今回の選挙ボイコット宣言で、他の政党にも選挙をボイコットするよう、呼びかけている。
 このキファーヤ党の選挙ボイコット呼びかけに対し、ムスリム同胞団はあくまでも、選挙に参加して戦うとしているが、もし、すべての野党が選挙をボイコットするのであれば、ボイコットに参加することも、ありうると答えている。そうは言っても、ムスリム同胞団の幹部が、全国で逮捕投獄されているというj状況から判断すると、このキファーヤ党の選挙ボイコットの呼びかけに、ムスリム同胞団が応える可能性は決してい低くないだろう。
 ムバーラク大統領は長男の子息(孫)の死亡で、延期になっていた訪米を、つい最近実現したが、そこでは特別に重要な話し合いは、なかったようだ。アメリカもあるいは、ムバーラク体制後を、既に考え始めているのかもしれない。つまり、アラブ各国と同様に、エジプトの国内政治も、必ずしも安定していないということだ。
 もし、全野党が来年の国会議員選挙をボイコットし、大統領選挙もボイコットした場合、エジプトはどうなって行くのであろうか。体制はきわめて不安定なものに、なるのではないか。