イランの国内では、6月に行われた選挙以来、権力内部に亀裂が入り、その亀裂が日を追うごとに、深くなっているような状況だということは、これまで中東TODAYで何度か書いてきた。
イランばかりではなく、パレスチナ内部でも権力機構内部に、亀裂が入り始めているようだ。西岸地区で開催された、ファタハの総会は20年ぶりであったにもかかわらず、内部で意見の対立が目立ち、本来討議すべきテーマは、ほとんど話し合われずに終わったようだ。
ファタハはパレスチナ解放の中心組織であり、これまでパレスチナの解放闘争を、展開してきていたのだが、いつの間にか、その本筋を離れ、外国からの援助金を奪い合う組織に、変わってしまったのだろうか。
ファタハの総会は、本来であれば(1)これまでの闘争の総括(2)ハマースとの和解(3)難民問題(4)イスラエルとのこれからの交渉(5)ファタハ内部の汚職と資金の使途確認、などが話し合われるべきであったと思われる。
しかし、それらのほとんどが会議のテーマには上らず、マハムード・アッバース議長の権力を強化することに、会議の推移は集中したようだ。その結果、新たに選出されたファタハの中央委員のほとんどが、マハムード・アッバース議長の支持者で固められたと言われている。
当然のことながら、落選者のなかからは、選挙の結果に対する反発が生まれているが、マハムード・アッバース議長側からは「敗者の常套発言」と一蹴されている。
しかし、ことはそう簡単ではなさそうだ。ファタハの総会以後、ファタハ内部で主流派と反主流派の対立が拡大し、新たなファタハ(ファタハ・バアス=ファタハの覚醒)が結成されるのではないか、という予測が出始めたからだ。
この分離の動きに対して、マハムード・アッバース議長が使う手段は「潤沢にあるファタハの資金」による「飴と鞭作戦」であろう。つまり、マハムード・アッバース議長を支持するのであれば、個別にでも金を与え、そうでない者に対しては、金を与えないという手法だ。
さてそこで問題は、これら反マハムード・アッバース側のベテランや若者が、これまでの贅沢を捨てて、貧しくともパレスチナ革命闘争に向かえるかだ。主流派から外された、ベテラン組のほとんどは「俺の取り分が少ない」ということが本音であり、若者は「権力の座に就きたい」ということが本音であろう。
そうだとすると、反主流派の動きは、外国がスポンサーにでもならない限り、先細りになるのではないか。そのスポンサーだが、今のアラブには結構存在することを、忘れてはなるまい。従って、マハムード・アッバース議長は、油断すべきではあるまい。