イランでレイプは起こったし起こらなかった

2009年8月15日

 イランで6月に行われた選挙の後に、選挙結果に不満を持った多くの国民が、政府に対する抗議デモを行った。そして多くの国民が、結果的に逮捕され、投獄されルこととなった。

 反政府側に対し、政府が取った強硬対応の前に、何の為す術もなくなったかに見えたなかで、大統領候補者の一人カロウビ師が、とんでもない告発を始めた。それは、逮捕者の女性が、レイプされたという訴えだった。

 しばらくの沈黙が続いた後、政府側は国会議長の、ラリジャニ氏の口を通じて、レイプは無かったと、事件を否定した。性的モラルの厳しい、イスラム教の神権統治下にあるイランで、レイプが政府のスタッフによって、行われたということになれば、政府も最高権威者も、国民の信用を失うことになろう。

 したがって、政府側が「レイプ事件は起こらなかった」と否定したのは、当然であろう。たとえあったとしても、それを認めるわけにはいくまい。しかし、反政府側はだからといって、レイプが確実にあったということを、証明することは難しい。 

それは、イランのようなイスラム教の国で、女性がレイプされたと、公の場で証言することは、彼女のその後の人生を、完全破滅に導くことになるからだ。したがって、レイプ事件が取り上げられても、確たる証拠は示せない、ということだ。

政府側はその事情をm百も承知で「レイプはなかった」と発表したのであろう。同時に、だからといって、反政府側のレイプ事件告発が、何の効果も生まなかったかといえばそうではない。イラン国民の多くが「そんなこともあるだろう」とこの問題を受け止めるからだ。

つまり、イランの選挙後に起こった、デモの逮捕者のなかに、レイプの被害者が出た、という反政府側の告発は、それ相応の効果を生んだということだ。同時に、政府側はそれを否定することが、出来たということだ。

イランではレイプ事件は、たとえ起こっても、起こらなかったことになりうるし、起こっていなくても、起こったことになりうるということだ。それにしても、レイプ事実であるならばひどい話ではないか。