イエメンの内紛は国際的な不安に繋がっている

2009年8月13日

 イエメンで長い間続いていた内紛が、大事な局面に差し掛かっているようだ。その内紛とは、イエメンの政府軍とイスラム教シ―ア派の一派である、ザイデイ派組織との武力衝突のことだ。(国民のシーア派人口は42パーセント)

 当然のことというか、日本ではさしたる資源もない、アラブのなかの最貧国イエメンでの今回の出来事は、注目されることもなく、全く報じられていない。

 イエメンは1960年代初頭まで、各地域には部族長や宗派のリーダーがおり、彼らによって統治されてきていた。それが北イエメンと南イエメンという近代的な二つの国家であり、最終的には1990年に、南側が北に吸収されるかたちで、統一国家が誕生している。

 それでも地方の部族集団は、イエメンの中央政府に従わず、独自の自治を貫いてきていた。なかでも、宗教的結束の強い地域では、部族という血のつながりと、宗教のつながりで強固な地域連帯が、出来上がっていたのだ。

 このため、イエメン政府は統一された後も、地方の組織の自治を、放置する形になっていた。そのなかで興味深いのは、サウジアラビアとイエメンの国境地帯に居住する部族は、中央政府の管理を離れ、独自に武器兵器を取り扱い続けている。

 述べるまでもなく、サウジアラビア国内でテロを行う原理主義者たちは、このイエメンの武器市場で武器を購入し、サウジアラビアの国内で、テロを行うという形になっている。

 だからと言ってサウジアラビア政府は、この武器商売をしている部族に対し、直接手を出すことはできなかった。述べるまでもなくそれは、イエメンの領土内で、行われていることだったからだ。

 今回、イエメン政府がアルホーシ・グループに対し、本格的な攻撃を加え始めたのには、幾つかの理由が考えられる。それはアルホ―シ・グループがシーア派のザイデイ派であることだ。つまり、シーア派であることから、外国の支援が拡大し、ますます抑え込むことが難しくなる、危険性があるからだ。

 そのことは、サウジアラビアとの間でも、問題になって行こう。最近になって、サウジアラビア政府はシーア派に対し、厳しい対応を取り始めている。なぜならば、サウジアラビア国内のシーア派が、本格的に分離独立の動きを始めれば、同国の産油地帯は、すべてシーア派の手に、渡ってしまうからだ。この場合も、外国の関与が懸念される。

 もう一つの懸念材料は、アラビア半島とアフリカ大陸との間にある、バーブルマンデブ海峡を挟んでいるイエメンとソマリアが、極めて不安定な状態になることは、将来的にどう海峡の航行が、脅かされるという不安があるのだ。現在でも、ソマリアの不安定化が海賊の台頭を許し、国際的な問題となっている。

 アフリカ大陸側のソマリアだけではなく、アラビア半島側のイエメンまでもが混乱し、イエメン政府による統治が弱体化すれば、イエメン側からも海賊が、出てくることになりかねない。

 今回のイエメン政府の決断は、一国家の内紛問題ではなく、極めて深刻な国際的な問題なのだ。したがって、日本もこの問題の推移について、注目する必要があろう。