また再燃し始めた南部レバノンの緊張状態

2009年8月11日

 レバノンとイスラエルとの間では、過去に2度も本格的な戦争が、起こっている。しかし、一度目の戦争は、イスラエル軍対パレスチナの戦争だった。そして二度目は、イスラエルとレバノンのヘズブラとの戦争だった。

 そしていま、三度目の戦争が起こるのではないかという懸念が、イスラエルとレバノン双方に、広がり始めている。それは、ヘズブラがこの前の戦争以来、相変わらず強気の姿勢を、崩していないことによろう。ヘズブラは何時でも再戦の覚悟がある、と豪語しているのだ。

 戦争が再発する懸念を、イスラエルが抱いているには、それなりの理由がある。

第一には、前回の戦争で相当のミサイルや、その他の兵器を消耗したヘズブラが、現在では以前の戦争前よりも、多くの兵器を備蓄したと言われている。このため、イスラエル側は最近になって、南部レバノンにあるヘズブラの武器庫を、空爆するという行動に出た。案の定、そこは兵器庫であり、空爆すると大爆発が起こっている。

 第二には、ヘズブラが小規模のミサイル攻撃を、最近イスラエルに行ったということだ。イスラエル側にはこの攻撃で、死者は出なかったものの、負傷者が出、建物が破壊されている。

 第三には、先のイスラエルとの戦争後、ヘズブラが単なるミリシア組織ではなく、レバノン議会に多くの議席を持つ、政治組織に成長したことだ。

 第四には、ヘズブラが今度の内閣に、しかるべきポジションを得ることが、確実になったことだ。この結果、ヘズブラは国家予算に関与でき、ヘズブラの意向をレバノンの政治に、反映することが確実にできるようになったことだ。

 イスラエルは現在、レバノン南東部に軍を移動させているということだが、ヘズブラやレバノン軍もこれに対応して、軍を国境沿いに移動させている。まさに一触即発とは、このことを言うのであろうか。

 イスラエル政府はレバノン国境に展開する、イスラエル軍の指揮官を始めとする、幹部の入れ替えも行っている。彼らは歴戦のつわものだと言われており、イスラエルは緊張がしかるべき状況に至れば、レバノンに対する攻撃も、辞さないということであろう。

 予防のための攻撃が、アメリカによって語られているだけに、イスラエルが危険を避けるために、事前に危険を察知して、軍事行動に出ることは、否定できない可能性であろう。