6月に実施された、イランの大統領選挙結果をめぐり、反体制側が「正当なものではない、」「選挙結果は操作されたものだ」ということで、大デモが起こった。以来、政府側は革命防衛隊や、警察などを動員し、反対派の集会をことあるごとに弾圧してきた。
しかし、いまだに反対派の抵抗活動は、終わりを迎えていない。それどころか、次第に政府側と反政府双方が、暴露、中傷、噂を駆使し、お互いに敵側を潰す動きに出ている。
政府側は、反政府側が外国の支援を受けて、反政府活動を展開しているとし、逮捕者の一部に対しては、革命に対する敵対行為として、死刑をも含む裁判を開始した。もし、革命に対する敵対行動であった、という結論が出れば、反対派の重鎮が、死刑に処せられることも、ありうるということだ。
加えて、政府側の将軍の一人は、ムサヴィ、カロウビ、ハタミ氏らを、裁判にかけるべきだとも主張し、彼らも有罪となれば、処刑の対象になろう。しかし、そのことはイラン国内の反政府の動きを、何倍にも何十倍にも、拡大する危険性を、伴っているともいえよう。
他方、反政府派は逮捕者のなかに、強姦された者がいるとして、政府を非難し始めている。イスラム教を国教とするイランでは、政府側の人間による、強姦があったとすれば、極めて不名誉な事件ということになろう。当然厳重な処罰が行われるべきだ、と政府側も考えざるを得まい。
こうした政府側と反政府側の、攻め合いが行われるなかで、なんとなく双方の間で、大人の取引が行われているのではないか、とも思える節がある。それは、ハメネイ師の言動に、特に表れているのではないだろうか。
当初は、アハマド・ネジャド大統領の当選を、早い段階で認めたにも拘らず、その後には、アハマド・ネジャド大統領の親戚を副大統領に起用する人事に、明確な反対の立場を示してもいる。
つまり、政府派と反政府派の間で、ハメネイ師は上手に泳いでいるのではないか、とも思えるのだ。あるいは、ハメネイ師は自身が打ち出した、当初のアハマド・ネジャド大統領寄りの立場が、将来的に自分自身に対する多くの敵を、イラン国民のなかに作り出してしまう、という不安から生まれた、対応の変化なのかもしれない。
こうしたイラン内部の揺れは、外国の関与介入の機会を、より大きくするかもしれない。ただし、その場合の関与は、イラン国内の反対派と、直結するようなものであってはなるまい。そんなことになれば、反対派の上層部の人たちは、国家反逆罪で、全員が処刑されることもありうるのだから。