イラク政府は国内の宗派間対立を、緩和させようという考えから、スンニー派とシーア派の男女が結婚する場合、2000ドルの褒賞金を出すことを決めた。
スンニー派のターリブ君がシーア派の女性と結婚を決めると、政府は2000ドルの褒賞金を贈った。彼と同じように政府から褒賞金を受け取ったカップルは、イラク全土で1700組にも昇るということだ。
イラク政府はこのほかにも、イラクの若者たちが結婚しやすいように、集団結婚式も行っているが、先日は15組のカップルが、集団結婚式を挙げているということだ。
イラクではサダム時代、スンニー派とシーア派が結婚することは、別に珍しくなかったのだが、イラク戦争後は宗派間の武力衝突が繰り返され、宗派を超える結婚は、タブー視されるような状態になった。
ここにきて、スンニー派とシーア派の若者が、結婚するケースが増えてきているのは、イラク社会がだいぶ安定してきたからであろう。
あるイスラム教の導師は、結婚の儀式を過去2カ月の間に、4-50組挙げたが、そのうちの20組は、スンニー派とシーア派宗派間の結婚だったと語っている。
結婚はある意味で平和のシンボルなのかもしれない。2007年に結婚したカップルの数は274014組だったものが、2008年には357593組に増え、今年初頭からの3ヶ月間にはではすでに62・626組が結婚しているという報告がある。
これらの数字には、クルド人の結婚については含まれていないが、クルド地区はスンニー、シーア地区に比べ安定していたので、結婚する傾向はより高かったのではないかと思われる。
スンニー派とシーア派が武力衝突を繰り返していたころは、どちらの側も自分の子供を結婚さることによって、殺害されたり虐待されるのではないか、という不安が強かったようだ。
宗派間にまたがる結婚が多くなった原因には、イラク国内の安定に加え、国民の経済的事情もあろう。貧困レベルで生活している人たちにとって、結婚の褒賞金が2000ドルもらえるということは、非常に魅力的なことであろう。
この報奨金は結婚の届け出をし、集団結婚式に参加すると、封筒に入れられて渡されるということのようだ。しかし、イラクの若者の名誉のために一言付け加えると、スンニー派とシーア派の結婚は、イラクでは何百年も前から続いていたことであり、報奨金が出るようになってからみられるようになった、新しい傾向ではないということだ。