ファタハの新幹部とM・バルグーテイの処遇

2009年8月12日

 20年ぶりに開催されたファタハ(パレスチナ解放運動)の総会は、大揉めに揉めたようだ。つまり、20年のそれ以前から、ファタハ幹部になっている人たちが、いまだにその席を占め、若手に席を譲ろうとしないからだ。

 ではその古手の幹部たちが、パレスチナ解放闘争の上で、何を成果として挙げたのかといえば、ほとんど挙げていないということであろう。アラファト議長がイスラエルに妥協して、勝ち得た(?)パレスチナ自治区の設立も、いまだに実態は自治区になりきっていない。

 そこで若手のファタハ・メンバーたちは、そろそろ幹部交代すべきだ、と騒いだということだ。結果は若手幹部の登用が決まったが、その顔ぶれはあまり変わらない。誰もが知っているところでは、ムハンマド・ダハラーン、マルワーン・バルグーテイ、ラジューブ、キドワ、アーロウルといったメンバーが、新たに中央委員に就任したことであろうか。

 これらの新幹部のなかで、いま話題になっているのは、マルワーン・バルグーテイ氏だ。彼は第二次インテファーダ闘争のなかで、イスラエル側に逮捕され、5生(5回の命)の終身刑に服している。

 しかし、イスラエル国内の議員などの間から、彼こそが唯一、パレスチナ人全体を代表できる人物であり、彼とこそ和平の交渉をすべきパートナーだ、という声が持ち上がっている。

 そのことから、イスラエルの少数民族相である、アビシャイ・ブラベルマン氏は、マルワーン・バルグーテイ氏の釈放を訴えている。彼に言わせれば、「マルワーン・バルグーテイ氏はファタハの中央委員になったのだから、釈放すべきだ。」ということのようだ。

 アビシャイ・ブラベルマン氏は、「マルワーン・バルグーテイ氏はファタハを穏健な組織にしていけるし、パレスチナ人の間で政治的リーダーシップを、執っていける人物だ。」というのだ。

 こうした話題が出始めたということは、マハムード・アッバース議長の人気に、陰りが出てきていることと、彼の健康状態が問題になっているのかもしれない。マハムード・アッバース議長の後任には、ムハンマド・ダハラーン氏が考えられるが、彼の評判は両極端であり、必ずしも後継者にはふさわしくないのではないか。

 その点、インテファーダを闘い、イスラエルの獄中にあるマルワーン・バルグーテイ氏は、パレスチナの次世代を代表するに最もふさわしい、ヒーローということであろうか。