彼はイランの大統領選挙結果に不満を抱き、デモを行ったメンバーとその首謀者に対し、厳しい対応をすべきだと語っている。しかも、このデモの首謀者たちは、外国との関係をもあるとし、断罪すべきだとも語っているのだ。
他方、これまでデモ企画者と参加者に対して、厳しい意見を述べ、アハマド・ネジャド氏の大統領当選を、いち早く支持してきたハメネイ師は、最近になって、デモ参加者に対する対応を、和らげてきている。デモ企画者たちが外国との関係を持っているという、アハマド・ネジャド大統領の指摘についても、否定的な立場を取っている。
つまり、ハメネイ師は現在のような、国論分裂の状態は、イラン国家と神権体制にとって、危険だと判断したということであろう。アメリカのイラン攻撃の可能性は、だいぶ低くなったものの、イスラエルの攻撃の可能性は、アメリカのそれよりも高いし、イギリスやアメリカ、イスラエルなどが、イランの弱体化工作を、続けていることは事実であろう。
そうした判断は、アハマド・ネジャド大統領の対極にいる、ムサビ氏やラフサンジャニ師も同じだろう。だからこそ、ラフサンジャニ師はハメネイ師を中心とする、国民再連帯を呼びかけたのだと思われる。そして、そのラフサンジャニ師の呼びかけに、ハメネイ師も敏速に応えたのであろう。
こうしたイランの高位者たちの、暗黙の合意の外に、最近のアハマド・ネジャド大統領はいるのではないか。それは、アハマド・ネジャド大統領が新たな動きを、察知できないからではなく、意図的に埒外にいよう、としているのではないかと思われる。
アハマド・ネジャド大統領は二期目に入り、自身の権力を拡大することを、もくろんでいるのかもしれない。そうであるとすれば、早晩、彼の新たな一歩が踏み出されるのではないか。もしそうなった場合、ハメネイ師やラフサンジャニ師らは、どのような対応をアハマド・ネジャド大統領に対して、取るのか実に興味深い。
忘れてならないのは、現段階ではイラン国民のほとんどが、反アハマド・ネジャド大統領になっているという状況だ。ハメネイ師もアハマド・ネジャド大統領の暴走を、快く思ってはいまい。突然の大統領更迭、ということも起こりうるし、アハマド・ネジャド大統領がそれに、力で抵抗することも、考えうる状況になってきているのではないか。