A・ハキーム師が重態その後のイラクは

2009年8月24日

 イラクのシーア派組織SIICのリーダーである、アブドルアジーズ・ハキーム師が重態で入院した。彼は肺癌に罹っているということだ。彼の指導するSIICは、イラクのシーア派組織では、最も大きなものだと言われており、この組織以外では、モクタダ・サドル師が率いるマハデイ組織であろう。

 もしアブドルアジーズ・ハキーム師が病没した場合、彼の息子アンマル氏が、後継者となることが予想されているが、一部には彼の指導力は、巨大な組織をリードしていけるのか、いぶかる人たちもいる。

 そうなると、今後のイラク内シーア派社会では、イランから移住しているシスターニ師に加え、モクタダ・サドル師が大きな力を、持つようになって行くものと思われる。

 つい最近、そのモクタダ・サドル師は、イランのクムで2年間勉強し、アヤトラ・オズマ(大アヤトラ)の学位を得て、帰国したといわれている。したがって、彼モクタダ・サドル師はファトワ(宗教裁定)を発出する、権限を有したということだ。

 そうなると、シスターニ師のファトワと、モクタダ・サドル師が発出するであろうファトワとが、いずれもイラク国内で有効とされるように、なるということだ。

このモクタダ・サドル師のアヤトラ・オズマの学位と、彼の発出するであろうファトワの権限は、イランのクムの学者たちに認められたものであるだけに、今後、モクタダ・サドル師はイランとの関係強化に、向かう可能性が高まろう。

その場合、サドル師の権威と比べ、アブドルアジーズ・ハキーム師の息子アンマル氏とでは、名声においても、学位、イスラムの知識においても、イランとの関係においても、天地の差が出てこよう。

もう一つの問題点は、マリキー首相がサドル師との関係を、どうしていくかということだ。マリキー首相はシーア派スンニー派クルドが、一体となるイラクの、国家建設を模索している。そうなると、サドル師のシーア派イラク国民の利害と、対立する場面が出てくる、可能性は否めない。

その場合、サドル師はマリキー首相と対立するのか、あるいは巧妙に良好な関係を維持しながら、イランの後ろ盾で、次第に勢力を拡大していくのか、そのいずれかであろう。

来年にはアメリカ軍のイラク領土からの撤退が、現実化していくことになり、その状態では、マリキー首相の力は弱まる、と考えるべきであろう。そうなると、マリキー首相はクルドとの問題、スンニー派との調整、モクタダ・サドル師のグループとの調整と、極めて難しい舵取りが、必要になるということだ。