イランの宗教学園都市コムの宗教学者の間から、イランの宗教最高権威とされるハメネイ師に対する 反発の動きが始まったようだ。
何十人かのコムの学者たちの間から、ハメネイ師のアハマド・ネジャド大統領に対する支持が、不公平だとする声が上がり始めたのだ。彼らはムサヴィ候補やカロウビ候補を、支持している人たちだ。
20人ほどの死者と多数の負傷者、そして数千人の逮捕者を出した、今回のイラン選挙結果が出た後の動きは、少なからぬ不満を、イラン社会の中に生み出し、それが今のところ、政府の力で抑え込まれてはいるが、内部でくすぶり続けているようだ。
こうした状況が長期化することの、危険性に対する不安が、コムの宗教学者たち、つまりイランのベラヤト・ファギ(神権政治)体制を、支える人たちの間から、出始めているということだ。
その不安を取り去るためには、ハメネイ師とアハマド・ネジャド大統領を始めとする政府が、早急に問題を解決しなければならない、と考え始めたということだ。そのためには、宗教学者の間から、ハメネイ師の言動にクレームをつけることも、辞さないということであろう。
他方、今回の騒動の中で、ムサヴィ候補に暗黙の支持を寄せていたラフサンジャニ師は、選挙後のデモで逮捕された人たちの家族代表と会い、「現在の状況を快く思っていない人が多いだろう。」といった趣旨の発言をしている。
このラフサンジャニ師の発言は、直接的ではないが、ハメネイ師とアハマド・ネジャド大統領の、今回のデモへの対応に対する、批判となっている。
宗教学者の世界の駆け引きは、極めて微妙かつ、手の込んだものであるようだ。しかし、次第に神権体制内部に亀裂が生じ、しかも、それが大きくなり始めているということは、ほぼ間違いないのではないか。