エジプトでコプト教徒がイスラム教徒少年を殺害

2009年7月 4日

 北エジプトで、コプト教徒の商店主が、イスラム教徒の少年を殴り殺す、という事件が起こった。田舎の街で、異教徒の間でこうした事件が起こることは、外国ではあるのだろう。

 日本では考えられないが、外国では宗教の違いが、時として大きな溝を、人と人との間に、作ってしまう場合が多い。もちろん、通常の生活のなかでは、あまり問題が起こらず、お互いが平穏に、暮らしているのだが。

 しかし、社会的な不満がたっかまったりすると、それが一瞬にして表面化し、大人同士の暴力事件を引き起こし、次いで、街の異教徒間の、集団暴力対決に、発展する場合があるのだ。

 これまでも何度となく、コプト教徒とイスラム教徒は、エジプト社会のなかで、衝突を起こしてきていた。今回の場合、コプト教徒側には大きな不満のエネルギーが、溜まっていたものと思われる。

 それは、豚インフルエンザの広がりが原因で、エジプト政府はコプト教徒の養豚家に、全ての豚を処理するよう、命令したことによるのではないか。そのために、何万頭という豚が殺され、処分されることとなった。

 政府の命令である以上、コプト教徒は逆らうことが出来なかったのだ。しかし、その殺された豚の持ち主に対し、政府からどれほどの補償費が、支払われたのか知らないが、多分に形ばかりの、金額ではなかったろうかと思われる。

 この豚大量処理事件は、イスラム教徒側にとっては、極めて歓迎できることであったろう。イスラム教徒にとって、豚は不浄な動物として、肉はもちろんのこと、その油も皮も、皆毛嫌われているからだ。その豚が大量に処理されたことは、イスラム教徒にとっては、朗報であったろう。

 他方、豚肉を食べているコプト教徒にとっては、豚が処理され肉屋で売られなくなったことが、大きなショックであると同時に、不満を募らせていったものと思われる。

 今回、北エジプトで起こった、コプト教徒のイスラム教徒少年殺害は、この豚の処分に遠因があるのかもしれない。死んだ少年には、本当に気の毒な話だが、日本人からすれば、この話は単に、こっけいな話でしかないかもしれない。