イランの大統領選挙結果、アハマド・ネジャド氏が大統領に当選したことに、イラン国民の多くが不満を表明し、大統領選挙後に首都のテヘランを始め、主な都市で大デモが起こった。
それが最近になって、やっと落ち着いた感じがするが、未だに国民の不満が消えたとは思えない。イラン政府はこうした国民の不満を、どう解消するかを、真剣に考えているところであろう。
そうしたなかで、イラクの国家安全顧問のムワッファク・アッルバイ氏が、意外なことを口にしている。それは、今回のイランの大衆デモが、暴動にまで至り、20人前後の死者を出したのは、裏でMKO(ムジャーヒデーン・ハルク組織=イランの反体制派組織)が、画策していたからだというものだ。
MKOはイランの反体制組織として、ホメイニ革命後非合法組織となり、ホメイニ体制から弾圧を受けていたが、サダム・フセイン大統領の時代に、イラク国内に亡命が認められ、活動を継続していた。
今回、イラン政府はMKOの関与を非難するとともに、彼らがイラク領内から、イランに潜入していたとして、イラクを間接的に非難していた。しかし、イラクのムワッファク・アッルバイ氏は、「MKOのメンバーは以前から、イラン国内に潜入し、潜伏していたし、イラク以外の国から、イランに潜入したのだ。」と関与を否定している。
しかし、MKOのメンバーが、イラク国内のアシュラフ基地で、訓練を受けていたという情報もあり、今後、イランとイラクとの間で、問題化する可能性があろう。ただ、イラク側がMKOのデモへの関与を、口にしたことにより、イラン政府側は反政府運動の中心人物たちと、MKOを結びつけることが、できるようになったことも事実であろう。
したがって、イラン政府はイラクに対し、MKOをかくまっていたと非難しながらも、他方では、MKOの関与をイランではない、イラクが語ったことにより、客観的な証拠とし、今後、MKOと反体制派の締め付けに、利用していく可能性はあろう。
イスラエルが伝えたところでは、既にムサヴィ派の幹部6人が絞首刑された、という情報もある。今後はもっと多くの、ムサヴィ派カロウビ派の幹部たちが、処刑される可能性が出て来る、と考えるべきではないか。
イランの宗教界の重鎮のなかには、反政府運動を起こした幹部を、処刑すべきだと、強硬論を主張している人たちもいることから、楽観は許されまい。こうした厳しい事後処理が進むなかで、再度、イラン国民は行動に出るのか、あるいは抑え込まれてしまうのか、判断の難しいところだ。