サウジアラビアの南部都市、ジャザーンにできた大学には、イスラム法学部が設置されていない。これまでのサウジアラビアの大学には、イスラム法学部が常設されており、多くのイスラム法学者が誕生していた。
しかし、あまりにも多いイスラム法学部卒業生には、就職の先が無いというのが現実だ。彼らは新しいシステムを使いこなす、能力などに劣っており、大学卒業とは言え、普通の会社では必要とされない人材だ。
そうしたイスラム法学部卒業生の就職難が、結果的にサウジアラビアの国内に不満を抱く、イスラム法学部卒業生を増やし、彼らは原理主義的な考えに傾倒していき、国内外でテロ事件に、関与するようになってきている。
さる2月にも、こうしたイスラム法学部卒業のイスラム学者二人を、サウジアラビア国王は解雇している。それだけ事態は困難になってきている、ということであろう。
つい数日前には、イラクのマリキー首相が、サウジアラビアのメッカのムフテイである、シェイク・アーデル・カラバーニが、イスラム教シーア派学者について問題があると断定し、殺害も許されると発言したことに対し、反発している。
確かに、イスラム教の教えに厳格なハンバリー派、その中のワハビー派(サウジアラビアの学派)は、シーア派をイスラム教徒として、認めない傾向が強い。そのため、サウジアラビアの篤志家(?)が、シーア派イスラム教徒をテロで殺害する、アルカーイダに資金を提供している、という情報もあるほどだ。
今回、ジザーン大学がイスラム法学部を設けなかったことは、時代の流れに合致した対応かもしれない。しかし、そのことはサウジアラビア国内の、保守派から反発を受ける、危険性もあるということでもあろう。