イランの大統領選挙結果をめぐり、不満を抱いていた国民が、大規模なデモを実行した。もちろん、反アハマド・ネジャドのデモだけではなく、アハマド・ネジャド大統領を、支持するデモもあった。
一部の映像報道は、工作されており、真実を伝えていない、とイラン政府は反論している。つまり、アハマド・ネジャド大統領を支持する集会デモの映像を、ムサヴィ支持の集会デモ、と報じたということだ。
そればかりか、最近になってイラン政府は、ネダさんの殺害は、イランの治安部によるものではなく、外国人あるいは外国と関係を持つ、反乱分子の犯行だと主張し始めている。その証拠は、彼女の体内から取り出された弾丸が、外国のものであったということのようだ。
ネダさんの殺害事件は、場合によっては、全ての犠牲者に当てはめられる、危険性が出てきている、ということではないか。つまり、反政府側はイラン政府の発表が、全てでたらめだという、主張の根拠に使い、政府側は全ての死傷者は、外国の手先によるものだという、主張が行われるのではないか、ということだ。
今回の騒動を機に、イラン政府は国内の、反政府と思われる人物や、組織に対する監視を強化しよう。外国との連絡についても同じであり、以前に行われていたように、パラボラ・アンテナの使用も再度、厳しく取締りが行われるようになろう。
結果的に、権力集団メンバー間のトラブルは、内部で調整が行われ、妥協点を見出して、何事もなかったかのように終わろう。ラフサンジャニ師は既に手打ちをしたようだし、大統領候補だったレザイ氏も、舞台から降りてしまった。カロウビ師は追悼集会を、国の許可が下りないからという理由で、無期延期してしまった。
残る抵抗派のリーダーはムサヴィ氏だが、彼は何処まで頑張る気があるのだろうか。もし、彼が今後も抵抗を続けるのであれば、厳しい裁判が待っている可能性がある。既に彼を裁けと主張する、高僧も出始めている、彼などは処刑しろ、とまで主張しているのだ。ムサヴィ氏が抵抗を継続するとすれば、それは命がけだ、ということのようだ。
ムサヴィ氏が抵抗を断念するのであれば、それは抵抗に参加した大衆と、そのなかで犠牲になった人たちを、裏切ることになる。いまのところ、ムサヴィ氏の妻が強硬な立場を、堅持しているようだが、いずれの国でも、男は追い込まれると弱く、女は逆に追い込まれると、抵抗する腹が据わるのかもしれない。