モサドの判断は甘過ぎたと元長官語る

2009年6月22日

 イスラエルの情報機関モサドは、世界でも最高レベルという評価がなされているが、今回のイランでの動きについては、必ずしも正しい判断が下せていなかったようだ。モサドの判断は案外甘かったのではないかということだ。

 このことに問題があるとして、エフライム・ハレヴィ元モサド長官が、彼の意見を述べているが、同時にモサドにとって、イラン情勢判断の困難さを、擁護してもいる。

 ハレヴィ氏は現在の段階で、イランの国内状況を的確に判断することは、非常に困難であるとし、モサドがイランでの選挙結果に対する不満で、行動を起こした段階での判断にミスがあったことは、無理からぬことだとしている。(モサドの判断では、選挙結果への不満行動は、容易に納まるというものだった。)

彼はこれからイランで起こることを予測するには、科学小説でも読むのが一番だろうとすら語り、いかに現在のイランが複雑な状況にあるかを、説明している。イランの状況は、デイリー・ベースで変化しているのだ。

 イランの現状を分析、予測することが困難な理由の一つは、抵抗運動の中心人物となっているムサヴィ氏が、1981年から1988年まで首相を務めていた時と、現在とでは、同じ考えではないということだ。

 したがって、過去のムサヴィ氏の言動から、彼が今後とるであろう行動について、予測することが不可能に近い、ということになる。

 現段階で、比較的簡単に予測できることは、イランの国内政治の混乱が、イランがこれまで援助してきた、ヘズブラやハマースの活動に影響を与え、今後は両組織が、弱体化していくことであろうか。

 イランの核開発については、イスラエルは当然のことながら、平和利用だけではなく、兵器の製造に繋がる危険なもの、と見なしているが、たとえ、ムサヴィ氏が大統領に就任しても、表現方法は変わっても、目的そのものに変化はないのではないか、ということのようだ。

 そう考えてみると、イスラエルはイランの混乱と変化を、期待の目で見守っていると同時に、アハマド・ネジャド大統領のような、ストレートな発言をし、世界を敵に回す人物の方が、イスラエルにとっては都合がいい、とも考えていよう。

 アハマド・ネジャド氏が大統領に就任している限り、彼の過激な言動があることから、イスラエルは世界に対し、イランの危険性を説得する手間が、省けるからだ。

 そうは言っても、イスラエルにとって一番不都合なことは、今回の国内動乱の後に、アハマド・ネジャド体制が継続することであろう。そうなった場合、アハマド・ネジャド大統領は国内的支持と自信をバックに、強硬かつ迅速に核開発を進める危険性があるからだ。