イランがいま、大きな転換点に立っていることは、日本の新聞やテレビでも、連日報道されていることからご存知だろう。
イランの、30年間続いたイスラム神権体制が、打倒されるかもしれないのだ。その中心になっている人物は、この前の大統領選挙に、立候補して落選した(?)ムサヴィ氏だ。
先日の金曜日、イランの宗教界のトップであり、最高権力者の地位にいるハメネイ師が、どのような演説を金曜礼拝の折にするのか、イラン国民ばかりか、世界中の人たちが固唾を飲んで耳をそばだてていた。彼が発した言葉は、極めて厳しいものだった。いかなるデモも認めない、もしデモを行えば弾圧する(流血の事態=殺害する)と言ったのだ。
このハメネイ師の発言に対し、ムサヴィ氏がどう反応するかが、次の注目点だった。彼がこれでデモを止め、権力に対する抵抗活動を止めてしまうのか、あるいは、抵抗を継続するのかということだ。
結果的に、ムサヴィ氏は「死を覚悟して抵抗を継続する」ことを宣言したのだ。お見事では済まされない、イランの体制を命がけで、打倒すると宣言したのだ。従って、今後もイランでは抵抗活動が継続されるだろう。そしてイラン国民も、多くがムサヴィ氏を支持して、立ち上がるだろう。
ハメネイ師やアハマド・ネジャド大統領は、外国、なかでもアメリカ、イスラエル、イギリスの関与を非難しているが、このような事態を招いたのは、外国の関与よりも、自分たちの失政の結果だということだ。
さて、イラン、なかでも首都のテヘランは、デモ参加者に対する容赦のない弾圧で、流血事件が多発し、死傷者が増えている。革命防衛隊やバシジは放水車、催涙弾ばかりではなく、実弾も使っているという情報もある。
彼らデモ参加者で負傷した者は、病院に担ぎ込まれれば、反政府のデモに参加していた不穏分子、反政府テロリストということで、革命防衛隊のメンバーなどから、どのような仕打ちを受けるか分からない。病院にかつぎ込まれるということは、より危険な状態に、自分の身をさらすということなのだ。
このような危険な状況を、いち早く理解した欧州の大使館は、負傷者は病院に行かずに、大使館で治療を受けるように呼びかけているようだ。しかも各大使館の場所を明示した地図までも、インターネットなどで流しているということだ。
オーストラリア、フィンランド、ドイツ、イギリス、オランダ、ノル ウェー、ベルギー、メキシコ、ポルトガル、フランス、スイス(米大使館代行)、スペイン、オーストリア、デンマーク、カナダ各大使館がそれだ。
この大使館リストのなかには、日本が含まれていないことにお気づきだろう。その通り、そのわけは以下のようなものであろう。
:日本政府と外務省、現地大使館は、イランの現在の状況を読みきれていな。
:日本政府と外務省には、人道という言葉が存在しない。
イランでムサヴィ氏が主導する勢力が、権力の座に就いたとき、日本政府はどう言い訳をするのだろうか。あるいはそんなことは問題ではない、と無視するのだろうか。
在外日本大使館に勤務する医師は、大使館のスタッフに対する、医療サービスが義務であり、その他の日本人に対する医療サービスは、あくまでもサービスに過ぎないのだ。従って、現地人に対するサービスの義務なぞ、全く無いということになるのか。