ハメネイ師の焦りとイスラム体制の終焉

2009年6月21日

 イランのホメイニ革命から、既に30年が経過している。つまり、ホメイニ革命が成功した1979年に生まれた子供たちが、既に30歳に達しているということだ。日本では30歳はまだ子供だが、イランやアラブでは、立派な大人の年齢だ。彼らには見識があり、責任ある行動もする。 

 そしていまは、世界中の情報が瞬時にして届く、インターネット時代であり、携帯電話の普及率も高い。衛星放送受信用のパラボラ・アンテナを政府が禁じても、庶民はその裏を簡単にかける時代だ。

 つまり、世界中が共通の価値と、自由を求める時代に、なったということだ。今回のイランでの出来事でも、携帯電話やインターネットが、大活躍をしている。イラン政府が情報漏れ、イラン国内の出来事をどんなに厳重に取り締まって、外国に出ないようにしても、押さえることはできなくなっている。

 今回の選挙で、アハマド・ネジャド大統領が勝ったのか、負けたのかについて、言及するつもりはないが、その後の経過を見ていると、アハマド・ネジャド大統領は確実に、選挙で敗北したといえるのではないか。

 大規模な反対デモが実行され、しかも、それが全国規模に拡大してしまったのだ。その国民の抵抗の前に、10パーセントの投票箱の票を数えなおすという、妥協を権力側が示したことによって、権力側の敗北は明らかになった。

 権力側は妥協を示すことによって、国民をなだめられる、味方につけることが出来る、と判断したのであろうが、国民の側は権力側の弱腰と動揺を、正確に把握したようだ。

 そして、待たれていた金曜礼拝のなかで、ハメネイ師が選挙の正当性を力説し、次いで、デモを行うものは容赦なく取り締まることを、明確に語ってしまったのだ。この結果、国民はハメネイ師に対する信頼を、完全に失ってしまったということだ。

 ハメネイ師の発言を受け、体制側の警察や革命防衛隊、民兵らが、一斉に強硬手段をとるという、強気の対応をとり始めた。まさに、力によって国民の意思をねじ伏せ、必要とあれば、多数の犠牲者が国民のなかから出ようとも、現在のアハマド・ネジャド体制と、その上に位置するハメネイ師の権力を、堅持していくということだ。

 しかし、いまの段階でそういうことが行われれば、国民はますます神権体制から、離反して行くだろう。ハメネイ師の強気の発言は、まさに弱気が生んだ大誤算だったということだ。

 たとえ、当分の間、権力側が武力を用いて弾圧し、国民を力によって押さえつけることに成功したとしても、既に、国民の権力に対する信頼は、完全に失われてしまったのだから、もう取り返しは付くまい。後は時間の問題だけということではないか。