エジプトの与党が憲法を改正し、女性だけの国会議員枠、64議席を設けることを決定した。女性候補者はこれ以外に、男女区別のない議員枠に、加わるべく選挙に立候補することも、できるというものだ。
この新たな与党による提案が、議会で通ったのは述べるまでもなく、与党議員の数が多数を占めているからだ。
しかし、この一見女性の権利拡大を、奨励するかに見える新法は、野党にとっては、追い出し以外の何物でもない。イスラム政党のムスリム同胞団や、世俗派のワフド党からは、当然のこととして反発が生まれている。
以前にもエジプト訪問の報告に書いたが、与党はムバーラク大統領の子息ガマール氏を大統領後継者とすべく、着々とその準備を、進めているということであろう。
エジプト議会が決めた、女性議員の数を増やすという、一見進歩派的なこの改革は、ムバーラク体制を強化し、ムバーラクファミリーによる体制を、継続して行くためのものなのだ。
しかも、選挙は当初no予定よりも早めて、実施されるといわれているが、それはムバーラク大統領の健康状態が、大分悪化していることの査証ではないか。ムバーラク大統領の目の黒いうちに、ガマール氏に大統領の座を継がなければ、与党の中の古参議員や、大臣の間からガマール打倒の動きが、起こる危険性があるからであろう。
エジプトに限らず、アラブ世界で進められる一見、民主的かつ進歩的な動きは、その裏に必ずといっていいほど、与党や権力者の別の思惑が、あるということだ。エジプト政府による今回の決定を、日本のマスコミが進歩的として取り上げるならば、世界の笑いものになるということだ。