全く異なるイスラエル・パレスチナの立場とアメリカ

2009年5月29日

 パレスチナ自治政府のマハムード・アッバース議長が訪米し、オバマ大統領と会談することになったが、さしたる結果は出ないだろう、というのが大方の予想だ。

 パレスチナのイスラミック・ジハード組織などは「アッバースとオバマの会談は時間の無駄に過ぎない。」と会談が成立する以前の段階から、切り捨てている。それほどまでに、この会談は意味がなさそうだ。

 マハムード・アッバース議長は「イスラエルの西岸地区への入植を、止めてくれ。」とアメリカに訴えているが、イスラエル側はイランとの関連で、パレスチナ問題を処理したいと語ると同時に、入植者の通常の生活が守られることは、イスラエル側の権利だと主張している。

 イスラエルが主張する、入植者の通常の生活とは、入植者が家族の増加などを理由に、住宅を拡張したり、それに伴う土地を確保したりする自由であり、学校や病院の建設もまた、入植者の通常の生活の一部だと主張している。

 つまり、入植者の通常の生活の権利と、それに伴う新たな工事は、認められるべきだというのが、イスラエル側の主張だ。イランのPTV(テレビプレス)は「イスラエルがアメリカをせせら笑っている。」という評論をしているが、まさにその通りであろう。

 入植者はそのうち、親戚も入植地に呼び、同居したいというだろう。その親戚は世界中から、来る可能性がある、ということだ。つまり、今後も際限なく、入植活動が継続していくということであり、ネタニヤフ首相は現時点では、入植地の拡大を、止めさせる考えは、持っていないようだ。

 マハムード・アッバース議長の口にし始めた、西岸の入植地に居住するイスラエル人(ユダヤ人)は、将来建設される、パレスチナ国家のシチズン(住民)として、認めるという考えは、一見問題の解決につながるようだが、アメリカがやっと口にし始めた「イスラエル人の西岸地区への入植の停止」と逆行するではないか。

 欲に目の眩んだ者は、真実が見えなくなるというが、マハムード・アッバース議長もその一人なのであろうか。何時も犠牲になるのは、一般の大衆の側だ。それは、イスラエル国民についても、言えるのではないか。彼らは入植地への移住を、奨励されてそこに住みつき、イスラエル政府にとって都合が悪くなると、自国政府によって、追い出されるのだから。

 シナイ半島をエジプトに返還したとき、キミット・キブツ(キミット入植地)の住民は、イスラエル軍によって追い出され、ガザ地区に入植していたイスラエル人も、イスラエル軍によって追放されているのだから。