マスウード・バルザーニが議長を務める、イラクのクルド自治区で、議長選挙が行われることになった。
選挙は、7月25日に行われるが、現段階で6人が、立候補しているということだ。マスウード・バルザーニ議長はもちろんのこと、イラク大統領であるジャラール・タラバーニ氏の妻の兄弟も、立候補することになっている。
これ以外には、ロンドンにベースをおいて活動している、カマール・ミラウドリー氏や、ビジネスマンのフセイン・カルミアーニ氏といった面々だそうだ。
ある候補は、「自分が自治区議長選挙に立候補することによって、クルド地区住民の政治意識を高め、地域住民の政治参加を、活発にするためだ。」と語っている。
しかし、本音はどうであろうか。クルド地区住民の政治的な意識を、住民の間で高めるというよりは、今回の自治区議長選挙は、経済的利益を得ようとする、動きではないかと思われる。
多分に、一部の候補者は、自分が他の者に最終的には、票を譲るという形で、選挙そのものを取引の材料に、するのではないかと思われる。
もう一点気になるのは、イラクのクルド地区は、マスウード・バルザーニ氏とジャラール・タラバーニ氏が、二分した形になっているという認識が、これまで日本国内では一般的だったが、どうやらそうではなくなってきているのではないか。
マスウード・バルザーニ氏の父親はサッダーム・フセイン大統領との抗争のなかで、最終的には殺害され、その子息マスウード・バルザーニ氏の名声が、父親の犠牲の下に高まったものだった。
KDPを代表するマスウード・バルザーニ氏と、PUKを代表するジャラール・タラバーニ氏が、イラクのクルド地区を、二分していた時代は終わり、現在では群雄割拠といった状況に、クルド地区はなってきているのではないか。
こうなると、諸外国はクルド地区に隣接する、キルクーク油田の石油を目当てに、いろいろな形でクルド各派を、支援することになろう。クルド住民が二分されていた時代には、関与には巨額な費用がかかったことから、国家的な関与に留まっていたが、クルド住民が分裂し、幾つものグループが誕生したということは、企業レベルでもクルド地区の内政に、関与できる環境ができてきた、ということではないか。
そのことは今後、クルド地区が複雑な状態になっていくということを、予測させる。関与する者には、イラク国内のグループも、含まれることになるのではないか。群雄割拠、同床異夢の離合集散が当分の間、繰り返されるのではないか。