最近、イラク政府が閣僚の、身辺調査を始めたようだ。それは、閣僚や政府の高官による、汚職が酷すぎるからということだが、それだけではなさそうだ。
今年1月に行われた、統一地方選挙の結果は、マリキー首相にとって大勝利となり、自信をつけたのであろうか。そのことが、次の段階へのステップを、踏ませることになってきたのかもしれない。
他方、現在刑務所に収監されている受刑者に対し、イラク政府は恩赦を始めてもいる。その多くが、スンニー派の受刑者だと伝えられているが、それは何を意味しているのだろうか。
実はこうした一連の動きは、来年のアメリカ軍撤退に、備えたものではないかと思われる。閣僚や政府高官による汚職は、反政府派の資金獲得に繋がることであり、放置することは、マリキー首相にとって危険であろう。
そこでマリキー首相は、汚職追放を口実に、反対派の閣僚を汚職ということで閣僚のポストから外し、権限と資金が彼らの手に渡ることを、阻止しようと思っているのではないか。結果的に残った閣僚は、極めてマリキー首相に近い人士たちだけということになろう。
マリキー首相が最初に組閣したときには、各勢力、派閥のバランスを考慮しなければならなかったが、ここに来て、その配慮をしなくてもよくなったのか、あるいは、配慮していたのでは危険、と判断したかのいずれかであろう。
他方、スンニー派の受刑者の多くを釈放したのは、バアス党員ではないかと思われる。彼らを刑務所から釈放し、情報機関に戻すことによって、イラク国内の治安改善を、考えているのではないか。それはもちろん、バアス党員がマリキー首相を支持する、ということを意味している。
以前にも書いたが、多分、マリキー首相とバアス党員、アメリカ軍との間で、何らかの密約が、出来たということではないか。そのことは、バアス党のイラク権力への復帰が、近いということかもしれない。
もちろん、バアス党はマリキー首相派との連携の形を、最初はとるだろうが、統治経験や組織力、教育レベルなどを考えると、次第にバアス党が主導権を握って行くように、なるのではないかと思われる。イラクはバアス党員を外しては、現在の複雑な状況を舵取りしていけまい。
そのバアス党は、サッダーム政権時代のものではなく、バアス主義を唱えたレバノン人、ミシェール・アフラク氏の精神に戻るのではないか。つまり、宗教や人種の壁を撤廃し、公正な政治参加を進める、ということだ。その結果、イラク国内の現在の宗派間、人種間の、対立は解消されるということではないか。それが成功するか否かは別だが。