イスラエルのネタニヤフ首相が訪米し、オバマ大統領とイランの核問題を中心に、中東問題について話し合った。
結果は、ほとんど明かされていないが、オバマ大統領がイスラエル・パレスチナの二国家設立による、中東和平を強調したことから、あたかもイスラエルが窮地に追い込まれたかのような、情報が流されている。
イスラエルのマスコミも例外ではなく、イスラエルとアメリカとの関係が、冷却化していくのではないか、という懸念が目立っている。しかも、オバマ大統領はイランの核兵器問題で、明言を避けたということになっている。
しかし、現実はどうであろうか。オバマ大統領はイランの核兵器開発について、ネタニヤフ首相に対し、アメリカにはイラン対応で、タイムテーブルがないわけではないと語っている。
つまり、今後一定期間(1年弱程度か)経済制裁などを強化し、イラン側に妥協を迫るが、それでもイラン側が妥協しないのであれば、その後は、しかるべき対応を採ることを、約束しているのだ。これは明確なネタニヤフ首相の、得点であろう。
他方、オバマ大統領はネタニヤフ首相から、何を引き出したのであろうか。ネタニヤフ首相はオバマ大統領に対し、二国設立案に明確な返答をすることが期待されていたが、彼はオバマ大統領が期待していた、返答はしなかった。
ネタニヤフ首相はパレスチナが、ファタハとハマースに分裂していて、イスラエルと交渉できる状態になっていないことと、ハマースがイスラエルの存在を認めず、これまでのイスラエル・パレスチナ合意を認めていない以上、交渉できないとしている。
つまり、交渉できない相手に対し、国家の設立を認めるということは、あり得ないという立場を示した。このネタニヤフ首相の主張は、論理的であろう。ハマースはイスラエルという国家を認めず、ユダヤ人を全てパレスチナの地(イスラエルを含む)から追放することを、標ぼうしている以上、交渉の相手ではないことは明らかであろう。
こうして考えてみると、ネタニヤフ首相の訪米は、イスラエル側が得点し、アメリカは得点できなかったというよりも、点を相手に与えた、ということであろう。
日本のマスコミや、一般の中東情勢に関心を持つ人たちの一部では、あたかも、今回のネタニヤフ首相の訪米が、アメリカ・イスラエル関係終焉への、ステップのように期待を込めて、受け止められているようだが、その判断は現実的ではない。