イラクのエルビルの会議で会った、ナジャフ市から来たシーア派の、女性活動家の話をご紹介しよう。彼女はイラクの地方女性が、社会進出しないために、立ち遅れているということで、女性の社会進出、職業従事の支援活動を、しているということだった。
そこで、まず未婚女性や既婚女性、そして最もその必要度の高い、未亡人に対する仕事の斡旋と、指導を行っているということだ。彼女はそのために、いままで1000人のイラク女性に会い、仕事の機会を紹介し、仕事を始めるように働きかけたそうだ。
しかし、反応は全く悪く、1000人のうち彼女の勧誘に応えて、仕事をする気になった女性は、13人に過ぎなかったと嘆いていた。
それではイラクの女性たち、なかでも未亡人はどうするのだろうかということになるが、まず、自分の親兄弟に支援を頼むのが第一歩だ。次いで地方事務所に行って窮状を説明し、援助を取りつけるということになる。
それもだめな場合は、街に出て物乞いをするということになる。イスラム世界では困っている者が、全く知らない赤の他人も含め、援助を求めることは、別に悪いことではない。これはイスラム世界共通の認識だ。
金曜日の昼の集団礼拝の後には、モスクの回りに、必ず物乞いの女性や老人、身体障害者が見かけられる。これは金持ちの国の場合でも、共通した現象なのだ。礼拝に来た人たちは何の気負いもなく、100円から1000円程度を、この人たちにさりげなく渡している。
しかし、そうした状況では、なかなか女性の地位は、向上しないのではないか。結果的に、追い詰められた場合、女性たちの選択肢には、極端な言い方をすると、特攻テロに参加するか、売春ということになるのであろうか。
その二つを比べた場合、当然、ジハーデスト(イスラムの聖戦の戦士)として、特攻テロに参加するほうが、名誉なことになろう。売春は罪だが、特攻は罪ではないからだ。しかも、イスラムのための戦いに、参加ということになればなおさらだ。
以前、特攻テロに加わる女性を、リクルートする女性が、イラクで逮捕されたが、こうした特攻テロ参加への勧誘説明は、自爆攻撃であるにも拘らず、案外単純なものなのかもしれない。