イスラエルのネタニヤフ首相が、パレスチナのマハムード・アッバース議長に対し、イスラエルをユダヤ人の国家である、と認めることを要求した。ネタニヤフ首相によれば、それがパレスチナ国家設立交渉の、前提となるということであり、ネタニヤフ首相は現段階で、パレスチナ国家設立を認めてはいない。
しかし、このネタニヤフ首相の要求に対し、マハムード・アッバース議長はイスラエルをユダヤ人の国家と認めることを拒否し、「彼らが自分たちの国をどう呼ぼうが勝手だ、彼らがイスラエルをユダヤ人の国家と呼ぶかどうかは、私には関係ないことだ。しかし、私はイスラエルをユダヤ国家と認めることを拒否する。」と語っている
一般的には、イスラエルはユダヤ人の国家だ、と思われているがそうではない。イスラエル総人口に占める、ユダヤ人の割合は75パーセントで、残りの25パーセントはアラブ人などだ。
そのユダヤ人のなかには、実はロシアなどから移住した人たちが多数いて、彼らは純粋なユダヤ人ばかりではなく、にわかにユダヤ教に改宗した、ユダヤ人が含まれているのだ。イスラエルは白人の割合を多くしたいのと、ユダヤ人の割合を多くしたい、という気持ちがあるのだろう。
イスラエル側がイスラエルを、ユダヤ人の国家として認めろということには、幾つかの隠された意味がある。第一に、パレスチナ問題の根本のひとつである、1948年以来パレスチナの地から追放され、難民となっているパレスチナ人を、どうするかという問題だ。
イスラエルはパレスチナ人の国家が、将来設立された段階で、彼らを受け入れるべきであり、パレスチナ難民を受け入れるのは、イスラエルではないと主張することが、予測される。第二に、そればかりか、イスラエルの強硬派のなかには、イスラエル国籍を有するパレスチナ人を、追放しろと主張する人たちもいるのだ。(パレスチナ国家が設立されていない現段階でも)
現在、イスラエルの人口は750万人で、そのうちの25パーセントが非ユダヤ人であることから、もしイスラエルが非ユダヤ人を追放し、パレスチナ側に追い出すとなると、パレスチナ自治政府は約150万人を、受け入れなければならないことになるのだ。
パレスチナ自治政府は、1948年以来追放され難民となっているパレスチナ人に対し、イスラエル領土内にあるあなたの土地には帰れない、とは言えないだろう。そして、150万人のパレスチナ人が、イスラエルから追放されて来た場合に、彼らの生活を面倒見る能力はあるまい。
マハムード・アッバース議長が、イスラエルをユダヤ人の国家と認めることを拒否した裏には、こうしたパレスチナ側の事情があるのだ。今後、パレスチナ側がイスラエルをユダヤ人の国家、と認めないということが、ネタニヤフ政権側に、和平交渉を遅らせる口実を与える可能性があろう。