エジプトとイスラエルは、シナイ半島で国境を接しているが、ここはガザのハマースの活動拠点であり、最近では、レバノンのヘズブラの、活動拠点にもなっている。
エジプトやイスラエルの主張によれば、イランがヘズブラとハマースを支援しており、このシナイ半島を経由して、イランが送る武器や資金が、ヘズブラの手を経て、ハマース側に届けられているということだ。
これまでも、シナイ半島のエジプト側から、ガザに通じる秘密のトンネルが、何本も掘られており、そこを伝って、ガザ地区には食料から燃料、武器、現金までが、届けられていたと言われている。
当然のことながら、これはシナイの住民にすれば、ビッグ・ビジネスのチャンスであり、国境沿いには、幾つもの商店や宿舎、レストランなども設けられていたということだ。彼らエジプト人のシナイ半島に住む、ベドウインたちはこれで生活が立派に成り立っていたということだ。
しかし、ここにきて新たな問題が発生し、シナイ半島の住民たちに、危険が及び始めている。それは、レバノンのヘズブラのメンバーが、シナイ半島に上陸し、そこを拠点とし、ガザ地区とエジプト国内での、テロ活動を計画するようになったためだ。
特に、最近摘発されたヘズブラのメンバーは、ガザへの武器の搬入が、主たる目的ではなく、エジプトやイスラエル国内でのテロ活動に、重点が置かれていた。その結果が、最近起こったヘズブラ・メンバーの、シナイ半島での大量逮捕だったわけだ。
問題は、エジプト側だけにあるわけではない。イスラエル側にとっても、ヘズブラの動きは、極めて危険なものであるだけに、シナイ半島の国境地帯はいま、イスラエルによって第一級の警戒地域となっている。
イスラエルは、場合によっては国境を越えて、エジプト領土内でヘズブラ撲滅作戦を展開するかもしれない。同時に、エジプト軍も同様の行動を、採る可能性は否定できまい。
結果的に、ヘズブラを対象とする、エジプト軍とイスラエル軍との行動が、ヘズブラ抜きのエジプト・イスラエル軍双方の緊張に発展していく危険性が、出てきたということだ。
エジプト国民の間にも、イスラエル国民の間にも、社会不満が拡大しており、限界点に近づいて久しい。それが、両国の小規模武力衝突を、起こすのではないかと懸念している。もし、そういうことになれば、イランにとってはもっけの幸いであろう。
イランにしてみれば、現在発生しているヘズブラとエジプトとの緊張敵対関係も、極めて有利な動きということになるのではないか。イランはエジプトが、対イスラエル闘争に参加することを、希望しているからだ。
もう一つは、ヘズブラがガザのパレスチナ人を支援していることは、エジプト人の多数が知っているわけであり,そのヘズブラをエジプト軍が、取り締まるということは、エジプト国民の間に、政府への不満を高める、可能性があるからだ。
ヘズブラのエジプト国内でのテロ計画は、瓢箪から駒を生みだすかもしれない。