トルコの政治は、常に軍部から強い影響を受けてきた。軍部が世俗主義を掲げたケマル・アタチュルクの精神に、反すると判断した場合、クーデターを起こして、その政府を打倒することが出来てきた。
過去に幾つもの政府が、そうして軍部によって打倒されてきたが、その最後の政府が、ネジメッテイン・エルバカン氏の、リファー党によって結成された政府だった。
このネジメッテイン・エルバカン氏は、4月に政治活動禁止が解け、政治活動に復帰することを宣言した。しかし、11年以上にも及ぶ、政治活動禁止の判決と、28ヶ月の受刑期間は、彼を取り巻く政治環境を、一変させたのではないか。まさに浦島太郎のような状況が、彼を待ち受けているのではないかと思われる。
ネジメッテイン・エルバカン氏は、現在83歳の高齢であり、彼の政治活動禁止期間には、ヌーマン・クルト-ムシュ氏が、SP党をリードしてきていた。その彼の努力によるのであろうか。SP党は2007年の段階では、2・3パーセントの支持であったが、今年3月に実施された地方選挙では、5・3パーセントの得票率を記録している。
ネジメッテイン・エルバカン氏は、政治活動復帰を宣言する、記者会見を開催したが、その席にはヌーマン・クルト-ムシュ氏は、姿を見せなかった。一説には、彼は記者会見に呼ばれていなかったのだと説明されているが、呼ばれていても、出席しなかったのかもしれない。
トルコの社会常識で判断すれば、旧党首であるネジメッテイン・エルバカン氏の、政治活動復帰の記者会見が、開催されるとなれば、呼ばれたか否かに関係なく、駆けつけるところであろう。
そうであるとすれば、ネジメッテイン・エルバカン氏が今後、SP党のなかでリーダーとして活動して行こうと思えば、多くの難問が待ち受けているのではないか。それどころか、支持を増やしてきているSP党を、分裂に導くかもしれない。
83歳になったネジメッテイン・エルバカン氏は、やはり自分の年齢を考慮し、SP党のご意見番に、留まるべきではないのか。少なくとも、現在の政治情勢下では、アメリカ政府もトルコの軍部も、彼を支持することはあるまい。AKPのギュル大統領や、エルドアン首相の年齢を考慮すると、トルコ国民からも、熱い支持は受けないのではないか。