最近、アメリカ政府のイラン関係に、暖風が吹き始めているような、気配がある。民間組織の間でも、イランとの対話が持たれ、アフガニスタンをめぐっては、アメリカ政府がついにイランと、直接話し合う状況が発生してきた。
この勢いでいけば、アメリカはイランに対する攻撃を完全に断念し、イスラエルに対いても、暴挙に出ることを阻止する方向に、動くだろうと思われる。だからこそ、バイデン氏はイスラエルのネタニヤフ首相に対して、厳しい警告を発し、イランに対し、単独の攻撃行動に出ることを、思いとどまらせようと、しているのであろう。
そうしたアメリカの方向転換が生じてきたのは、述べるまでもなく、アフガニスタン問題を何とかしたい、と思うオバマ政権の意向からであろう。アメリカはアフガニスタンへの物資輸送を、大幅に制限される状況が発生したが、イランを経由して、というところまでは踏み切れないでいる。
そこで、NATOがアメリカとは別の行動をとることによって、イランとの関係を開き、アフガニスタンに駐留するNATO軍(実質的にはアメリカ軍も含む)への物資輸送を、行おうとしているのであろう。
日本はこうしたアメリカの思惑と指示により、イランに対し、麻薬の流出防止に協力するという、新しいステップを踏み出したようだ。このことを喜んだイランのある外交官が、昼食を共にしようということで、会い意見を交換した。
彼はイランの対米関係に、大きな進展があろうと期待に胸を膨らませていたが、私はそれほどの進展はないだろうと反対の意見を述べた。それは、アメリカとイスラエルとの関係、アメリカと湾岸諸国との関係を考慮すると、どうしてもドラステイックな関係改善は、望みようもないからだ。
半分落胆するイラン外交官に「しかし、6月の大統領選挙でアハマド・ネジャド大統領が落選し、新しい顔がイランを代表するようになれば、話は別ではないか。たとえば、ムサビ氏が当選すれば、おのずとアメリカ側にも、変化が起きよう。」と話した。
外交官は立場上、ムサビ氏の当選については触れなかったが、彼もまた何らかの変化を、期待しているのであろう。アメリカ側に大きな変化がないのと同じように、イラン側にも大きな変化が、近日中に起こることは、期待できないのではないか。つまり、お互いに国内外に向けた立場があるということだ。