トルコはアメリカに何をしてやれるのか

2009年4月 9日

 このタイトルは実に興味深い。これまでであれば、「アメリカはトルコに何をしてやれるのか」というのが普通であったろう。いま支援が必要なのはトルコではなく、その逆で、世界の超大国アメリカがトルコの支援を、必要としているということだ。

 このタイトルのコメンタリーが掲載されたのは、CNNのブログであり、トルコ・オリジンのゼイノ・バランさんが書いたものだ。この人物はハドソン研究所の、シニア・フェローであることを考えると、あるいは納得がいくかもしれない。

 このコメンタリーのなかで、アメリカにとってトルコは、最も頼りになるNATOの加盟国だと強調されている。そして、アメリカにとってトルコは、アフガニスタン問題の解決の上で、最も有力な支援国になれるということだ。

 それは、トルコが穏健なイスラム国であり、アフガニスタンやパキスタンの文化、歴史、宗教観を、深く理解しているからだということだ。既にトルコはアフガニスタンとパキスタンの大統領を招待し、問題の解決に向けた話し合いを行っている。

 それは、トルコがアフガニスタン戦争を『いい戦争』と位置づけているからだということだ。他方、イラク戦争はトルコ国民の間では「悪い戦争」というレッテルが、貼られているということになる。

 バラク・オバマ大統領がアフガニスタンの戦争で勝利し、アフガニスタンに民主化をもたらし、復興を進めていく上で、トルコの役割は大きいとしている。トルコ国民は危険な地域での、ボランテア活動を実施している。そしてボランテア活動に加え、復興事業でも協力してきた実績がある。

 イラクのクルド地区に早い段階から進出し、学校を運営したり、道路や病院を始めとする公共施設を、建設してきたのもトルコ人たちだ。

 アフガニスタンでも、トルコは治安維持に協力し、安全を確保することが出来るとしている。そして病院、学校の建設を始め、復興事業に力を発揮できる国だとしている。

 トルコが他のNATO 諸国よりも、イスラム世界で活躍できるのは、トルコがスーフィー・イスラム(神秘主義=精神的純化を重視するイスラム)の研究と、実践が盛んなことや、イスラムの寛容の精神を、持っているからでもあろう。この宗教間の寛容の精神は、トルコの宗教指導者であるフェトッラー・ギュレン氏が提唱し始め、今では穏健イスラムの姿勢として、キリスト教世界やユダヤ教世界でも、重視され始めている。

 今回ヒラリー・クリントン国務長官がトルコを訪問し、次いで間も無く、バラク・オバマ大統領がトルコを訪問したのは、トルコとの協力の下に、イスラム世界とアメリカとの関係を、改善して行くことがバラク・オバマ政権の、主要テーマになっているからであろう。そして、その中心的問題が、アフガニスタンなのであろう。

 いま支援を必要としているのは、トルコではなくアメリカになっているということだ。世界の状況はここまで大きく、変化したということであろう。トルコがこのアメリカの要望に、何処まで応えられるのか。それによっては、トルコがまさに、実質的な中東の指導的国家に、なって行く可能性が高まろうということだ。