笑えないイラクのジョーク

2009年4月 5日

エジプトがナセル大統領の時代、政府は国民対して厳しい対応をしていた。ムスリム同胞団のメンバーは逮捕され、拷問されるということが、日常的に行われていた。政府はイスラエルとの戦争状態を、経済苦の主たる原因として、国民に耐乏生活を強いてもいた。

そうしたなかで、政府が国民に与えた唯一の自由は、ノクタ(ジョーク)による憂さ晴らしだった。そのためナセル時代には、気の利いた政治ジョークが、エジプト国内にあふれていたし、千夜一夜物語をもじったのであろうか、アリフ・ノクタ(千のジョーク)なるジョーク集が、週刊で発行されてもいた。

 イラクでは日本では起こりえない、いろいろなことが日常的に起こっている。それは生命、財産、名誉、全てにかかわる危険な出来事が多い。そうした出来事を、イラク国民たちはジョークにして笑い、生きることの悲しさ苦しさを、忘れようとしているのかもしれない。

 

 BBC の特派員が紹介するイラクのジョークは、彼がタイトルにつけているようにおかしくて、悲しいジョークが多いようだ。

 

「ある日、若者がコンピューター専門マーケットに行った。するとタクシーが止まり、ドライバーと3人の乗客が大急ぎで車から降りて、マーケットに走っていった。それを見た周囲の人たちは、タクシーに爆弾が仕掛けてあると勘違いし、大騒ぎになった。

 タクシーが爆発しないまま、時間が過ぎていった。するとマーケットからさっきの4人が出てきた。一人が爆弾は?と聞くと、この辺は駐車禁止になったから、警察に捕まらないように,大急ぎで買い物しただけだと答えた。」

 イラクではバグダッドに限らず、各地で車爆弾が爆発し、多数の死傷者が出ている。このため、何か危険な状況が発生すると、イラク国民は敏感に反応するのだ。

 

「ミニバスで若い女性に不埒なことをする若者がいるので、老人が制止しようと思い(アッラーフ・アクバル)と叫び非難した。すると運転手がバスを止めて飛び降り、乗客も大慌てでバスから降りた。」

 運転手も乗客も、この老人を特攻テロリストと、勘違いしたのだ。特攻テロリストは、アッラーフ・アクバル(アッラーは偉大なり)と叫んで、特攻攻撃を実行することがほとんどのために、この老人を特攻テロリストと勘違いしたのだ。特攻テロリストには、老弱男女の差なく加わっているのだ。

いずれにせよ、この若い女性は、老人の叫んだアッラーフ・アクバルの一言で、若者の不埒な行為から救われたのであろう。

 

「インド人の男性がベッドから突然起き上がって、助けてくれーと叫んだ、隣に寝ていた奥さんが、あなたどうしたの、悪夢でも見たの?と聞いた。夫は悪夢だろう、目が覚めたらそこはバグダッドだったんだよと答えた、、。」

 

軽いのをご紹介しよう。こんなのも紹介されていた。

 

「交通法が変更になり、バグダッド市内でも、安全ベルトを締めて運転することが義務付けられた。赤信号で車が止まると警察が近寄ってきて運転者に、君は何でベルト締めていないんだと注意した。すると運転者は、俺はズボンはいていないから締めていないんだと答えた。」

 イラクの男性の多くは、都市部でもズボンをはかず、オバキューのような民族衣装を着ている。したがって、ベルトは締めていないわけだ。この場合は、運転者が安全ベルトとズボンのベルトを、混同したわけだが、大衆はその程度しか物事を分かっていない、と言う意味であろうか。

 

 

 イラク国民たちは、これらのジョークを何度も口にし、同じジョークでも聞くたびに、お互いに腹を抱えて大笑いし、笑いすぎて涙を拭いているのであろうか?現実はこれらのジョークよりも、厳しく辛いのだから。