ムーサ・アラブ連盟事務総長のイスラエル首相判断

2009年4月 5日

 イスラエルに極右政党が集まった新政府が出来た、と世界中が大騒ぎしている。イスラエルの新内閣は30人の閣僚からなる、大型のものとなったが、そのうちの15人が、リクード党出身者となった。

残りの閣僚は、イスラエル・ベイトヌ党からは5人、シャス党からは4人、ユダヤの家党からは1人、トーラ・ユダヤ主義統一党からは5人、そして労働党からは、5人が閣僚となっている。 

この陣容を見て、誰もがイスラエルの新内閣は、強硬な政権であろうと思うのだが、意外な人物がそうしたアラブ各国や世界の判断とは、別の判断を下している。

それは、エジプトの元外相で、現在アラブ連盟事務総長を務める、アムル・ムーサ氏の判断だ。彼によれば、イスラエル新政府はトーンを変えただけで、政策そのものは不変だと判断しているようだ。ネタニヤフ首相のキャラクターが極めて強いために、明日にでもアラブあるいはイランとの、全面戦争を始めるのではないか、という不安を抱かせているが、アムル・ムーサ氏は別の判断を、下していると言うことだ。

ネタニヤフ新首相の性格からすれば、確かに極めて強硬な政策を、展開するのではないか、と思われるのだが、現在のイスラエルを取り囲む国際環境は、それを許してはくれないようだ。

イスラエルに対する批判が、ヨーロッパからもロシアからも聞こえてくるし、バチカンですらもあからさまに、イスラエルの非人道的なパレスチナに対する対応を、非難している。そうした風潮のなかからは、ヨーロッパを中心にホロコーストを否定する声さえも、出始めているのだ。

アメリカでは、現在悪化の一途をたどっている金融危機に始まる、経済の急激な後退は、ユダヤ金融機関がその原因だ、とする声も聞こえてきている。そのことは、アメリカ国内でユダヤ人批判が、拡大して行く危険性すらも、予測させる。

このようなことを考え、世界からイスラエルに集まる寄付金が、経済の大幅な後退の中で、減少しつつあることも考慮に入れると、ネタニヤフ新首相が望むような政策は、進め難くなっているということではないか。

アムル・ムーサ氏の判断は、希望的なものではなく、現実の政治と国際環境からの判断ではないか。その判断をネタニヤフ新首相が覆すとすれば、それは彼が偉大な英雄であるか、あるいは狂気に満ちた人物、ということであろう。

ネタニヤフ新首相が、そのいずれに当てはまるにせよ、ネタニヤフ新首相が強硬策を取れば、イスラエルを窮地に追い込み、世界のユダヤ人を危険に追い込む、原因になるのではないか。