30年以上にも及ぶ、エジプトのムバーラク体制が金属疲労を起こし、機能不全に陥っている、という評価がアメリカによってなされたのは、1,2か月前のことだ。
それを機会と思ったのか、これまで政府の強い監視と弾圧下にあったムスリム同胞団が、ゼネストを呼びかけている。そのゼネストの期日は、来週の月曜日4月6日だ。
ムスリム同胞団はエジプトで結成されて以来、80年ほどの歴史を持つ、アラブ世界全体に広がった、宗教政治運動組織だが、今回のゼネストの理由は、ムバーラク体制下で、エジプトはアラブの盟主としての役割を、放棄したことをあげている。
同時に、ムバーラク体制がエジプト国民の間の貧富の差を広げ、それを固定させたことも挙げている。
確かに、エジプトは以前とは異なり、イスラエルとの平和共存関係を維持することに重点を置き、アラブの他の国々の問題に対して、何の具体的な努力も払わなくなっている。
シリアは1967年の第三次中東戦争以来、ゴラン高原をイスラエルによって、占領されたままになっているが、エジプトはそのゴラン高原奪還に、影響力を及ぼそうとは考えていない。
パレスチナ問題にしてもそうだ。西岸でのイスラエル人による入植が進み、西岸地区は蜂の巣のような状態に、食い荒らされているが、パレスチナ自治政府だけでは、その状況を変えることはできない。
聖地エルサレムも、イスラエル側は東エルサレムのパレスチナ人居住者に対し、次第に追い出しを進めている。結果的には、イスラエルの考えるような、エルサレム全体を首都とする、構想が現実化するのは、時間の問題でしかないのかもしれない。
エルサレムはイスラム教徒にとって、メッカ、メジナに次ぐ第三の聖地なだけに、このエルサレム問題がどうなるのかということは、パレスチナ人だけではなく、アラブのイスラム教徒、そして、世界のイスラム教徒にとって、共通の重要課題なのだ。
ムスリム同胞団は、4月6日のゼネストをエジプト国内全体にまで、拡大して実施できるのか、あるいは、エジプト政府側の抑えつけによって、小規模か、不発に終わるのか。あるいはエジプト以外の、アラブ諸国にまで波及するのか、興味あるところだ。
エジプトの貧富の差が拡大し、貧民層は苦しい生活状態にあることは、何度となく報告してきたが、それにもかかわらず、エジプトでゼネストが成功しなかったのは、警察や軍がムバーラク体制側、についているからだった。
今回のゼネスト呼びかけが失敗すれば、その後には、当分、ゼネスト計画は出てこないのではないか。