第32代イスラエル政府が、ネタニヤフ首相のもとに成立したが、この政府は内外で多くの波紋を呼び、発足と同時に不評をかっている。
第一には、ネタニヤフ氏を首班とする内閣の構成が、強硬派の人々によって、固めたれたことによろう。ネタニヤフ氏の率いる、強硬派リクード党からは、14人が入閣し、もう一人の強硬派である、リーバーマン氏のイスラエル・ベイトヌ党からは5人が、そして宗教右派のシャス党からは4人が入閣した。
それ以外の政府に参画した、ユダヤの家党も右派であり、労働党からの参加も、労働党のなかの、右派の人士であることは、疑う余地もあるまい。結果的に、この新政府に対し、イスラエル国民の大半が、失望しているようだ。
こうした傾向は、アラブ諸国に明確に出ている。エジプト政府はアナポリス合意を無視した、リーバーマンに外相に対し、反省するまでは受け入れない、と強い立場を示し、パレスチナ自治政府のマハムード・アッバース議長は、ネタニヤフ政権には、和平の意思がないと判断を述べている。
(アナポリス合意は2007年にアメリカ、ロシア、国連、EUなどの支援のもとに、イスラエルとパレスチナが和平を成立させる方向で、努力していくという内容{ロード・マップ)であり、その手始めとして、イスラエルは入植をやめ、パレスチナ側はテロ行為をやめるという内容のものだった。)
イスラエルの擁護者であるアメリカ政府は、二国家(イスラエル国家とパレスチナ国家)の樹立による、中東和平を望んでいるが、ネタニヤフ氏は就任して以来、パレスチナに言及していない。つまり、パレスチナ問題は無視、という立場を示しているのだ。
イスラエルはこのままでは、世界から嫌われてしまうという不安から、ペレス大統領が「世界はパレスチナ国家の誕生を望んでいる」と、ネタニヤフ首相に説得したようだが、そのペレス大統領の言葉を聞く耳を、ネタニヤフ首相は持っておらず、助言の効果は期待できない雰囲気だ。
それどころか、ネタニヤフ氏が首相に就任して以来、彼はイランに対し、攻撃をかけるのではないか、という憶測が広がり始めている。その場合は、空爆であろうと言われており、その効果は不十分だが、イランの核兵器開発を、遅らせることはできるだろう、という話まで出てきている。
イスラエルの新政府が、いま語られているように、和平を全面拒否する強硬派政権になるのか、あるいは、ある段階から妥協を示していくのか、ということになると、どうも強硬路線が堅持されるのではないか、という意見が多いようだ。つまり、中東は緊張状態に入って行くということであろう。