バラク・オバマ氏が大統領に就任して以来、アメリカの新政権は、アフガニスタンへの増派を決定している。その数が現在駐留している兵員に加えて、35000人と言われている。
このニュースだけを耳にしたとき、アメリカはイラクだけではなく、アフガニスタンでも泥沼にはまっていくのではないか、という懸念を抱く人が少なくなかろう。
しかし、漏れ伝わってくる情報を見ていると、実はバラク・オバマ大統領は、アフガニスタンからの撤退を、考えているのではないかと思われる。それは最近、元駐アフガニスタン・アメリカ大使ウイリアム・ウッド氏が、タリバンを政党にしていく考えが、アメリカ内部で検討されている、ということを口にしたからだ。
彼の話によれば、アフガニスタンの憲法を改正し、国連のブラック・リストから、タリバン幹部の名を外すことが、話し合われているというのだ。
これに対し、タリバン側はアメリカと西側の軍隊が、アフガニスタンの領土から撤退しない限り、話し合いに応じるつもりはないと語っている。
問題は、アメリカ政府がタリバンと話し合いを始め、合意に向かい始めた段階で、タリバン以外の勢力が、どう動くかであろう。そもそも、アフガニスタン問題の複雑なところは、この国が国家という以前に、部族グループによって支配されているという事実だ。
もちろん、アメリカは同時進行の形で、各部族のリーダーとの交渉も、進めるということであろうが、話はそう簡単ではあるまい。アメリカが名誉ある撤退を、アフガニスタンから行うために、タリバンとの交渉を検討し始めたのであるとすれば、相当高度な外交交渉技術が、必要になるということではないか。
そしてその根本部分は、タリバンや各部族にどのような経済的なメリットを、与えることができるかであろう。そう考えると、また日本の資金援助が、ものをいうことになるのではないか。アメリカはそれを、始めからあてにしていよう。