サウジアラビアの国内情勢は危険に向かう

2009年3月23日

 サウジアラビアの国内に関するニュースは、ほとんど外部には伝わってこない。そのために、この国のなかで何がどう変化しつつあるのか、ということを判断するのは、非常に難しい状態にある。

 それでも、時折サウジアラビアの内部から、漏れてくるニュースがあり、それらを拾い集めて、判断するしかなさそうだ。最近、伝えられたニュースの中には、次のようなものがあった。

 サウジアラビアで、2003年から2005年の間に、殉職した警察の人数は、57人だということだ。彼らはテロリストとの戦闘や、テロ防止活動の中で、死亡したということだ。

 サウジアラビアでは、このため大型の刑務所を建設し、逮捕者を投獄しているが、その刑務所の建設には、皮肉なことにビン・ラーデン・ファミリーの会社が、あたっているということだ。世界的に知られるアルカーイダのボスは、ウサーマ・ビン・ラーデンだが、ビン・ラーデン社そのものは、サウジ王家との関係も深いことから、アルカーイダの悪影響は、受けていないということだ。

 サウジアラビア警察が逮捕し損ねた、重要犯罪者が85人いるが、彼らのリストが今年の1月に公表されている。しかし、彼らのほとんどはイエメンなど、外国にすでに逃亡しているということだ。

 サウジアラビアが抱える国内不安は、こればかりではない。サウジアラビア人のシーア派教徒の動きが、危険の度を増しているのだ。サウジアラビアのシーア派人口は、全国民のうちの、10から15パーセントと見積もられている。

 彼らは主に、サウジアラビアの東部アルカテイーフ地域に居住しているが、先月に聖地メジナで起こった、シーア派教徒巡礼者と警察の衝突以来、緊張を高めている。(この衝突で多数が死亡、負傷している) 

サウジアラビアのシーア派のリーダーである、シェイク・ネムル・バーキル・ネムル氏は、アルカテイーフ地域をサウジアラビアから分離独立させる、と主張し始めている。

それは、サウジアラビアの体制下では、シーア派の権利が認められず、公正も期待できないからだということだ。このシェイク・ネムル。バーキル・ネムル氏の声明は、インターネットを通じて流されもした。

サウジアラビアの内相ナーイフ王子は、外国の関与を指摘しているが、それがイランを指していることは、述べるまでもない。トルコのエルドアン首相がサウジアラビアを訪問した折には、アブドッラー国王がイランに対する対応を求めたが、スンニー・シーア派というイスラム教徒の宗派間に、分裂対立を創るべきではない、とたしなめたということだ。

現在、サウジアラビアはそこまで、不安定な状況に向かっているということであろう。イランからのアメリカ軍の撤退が実行されれば、サウジアラビアの不安定化は、ますます進む可能性があることも、忘れてはなるまい。