明らかになってきた米・イランの主張の相違

2009年3月22日

 バラク・オバマ大統領が呼びかけた、イランへの平和のメッセージに対し、イランの最高権威者であるハメネイ師が応えた。それは、極めて厳しい内容のものだった。 

 イランンのハメネイ師の反応が、現実をわきまえない頑固者の下した、判断だと受け止めるか否かは、人それぞれによって異なろう。そこで、バラク・オバマ大統領の発言の要点と、ハメネイ師側の反応の要旨を、列挙してみることにした。

 

(バラク・オバマ大統領の発言要旨)

1:ウラニュームの濃縮を止める。

2: レバノンのヘズブラやパレスチナのハマースに対する支援を止める。

3:イラク、アフガニスタンの平和実現に協力する。

4:イスラエルに対する攻撃を止める。

 

(ハメネイ師の応え)

1:ウラユームの濃縮を認める。

2:国連制裁を止める。

3:アメリカの制裁を止める。

4:シオニズム支援を含むアメリカの植民地政策を止める。

 

バラク・オバマ大統領はイランに対して、平和だけのメッセージを送ったのではない。あくまでも、アメリカはイランに対して、冷静に状況を判断する時間を、与えたということだ。

したがって、イランがバラク・オバマ大統領の呼びかけに応え、アメリカの要求を受け入れるのであれば、状況は平和に向かうが、そうでなればアメリカとイランとの緊張の度合いが、これまで以上に増すということだ。

残念ながら現段階では、イラン側にはバラク・オバマ大統領の呼びかけに対して、平和的な反応は見えない。ハメネイ師は「ブッシュ大統領と同じ間違った道を歩んでいる。」と評し、アハマド・ネジャド大統領も「悪魔のような強硬路線を捨てることだ。」と語っている。イラン側はこれだけではなく、イラン・イラク戦争時に、アメリカがサダム・フセイン体制を支援したことや、ペルシャ湾上でイランの旅客機が、アメリカniよって撃墜されたことも非難している。

イランはバラク・オバマ大統領の要求した、ウラニュームの濃縮を停止することはあるまい。アハマド・ネジャド大統領にしてみれば、核開発の強行な推進が国民対する、最も有効なアピールの手段だからだ。

レバノンのヘズブラやパレスチナのハマースに対する支援も、それぞれに成果が上がっている以上、途中で投げ出すはずはあるまい。そして、イスラエルに対する非難も、止むことはないだろう。

イラクやアフガニスタンの平和実現には、何らかの協力が得られるかもしれないが、それにはアメリカ側の妥協が必要であろう。イランはアメリカに協力する形ではなく、欧州をはじめとした、NATO諸国への協力(物資のアフガンへの搬入ルートを提供する)という形で応えるのではないか。

これに対し、バラク・オバマ大統領は、ハメネイ師の要求に何処まで応えられるのだろうか。ハメネイ師はウラユームの濃縮を、アメリカが認めるべきだとしているが、これは絶対に受け入れまい。国連制裁を止めることについても、そう簡単には、受け付けないのではないか。

そして、アメリカのイランに対する、制裁を止めることも、当分はありえない、と考えるべきであろう。シオニズム支援を含む、アメリカの植民地政策を止めるということについても、アメリカがいまだにイスラエルを、中東の要の国と位置づけている以上ありえまい

残念ながら、今回、バラク・オバマ大統領が提案した内容も、イランのハメネイ師の応えも、共に、相互に受け入れられない内容となっている、と言うことではないか。そうだとすれば、バラク・オバマ大統領はイランに対し、何のために今回の提案をしたのか、ということを考えるべきであろう。

今回の発言で、バラク・オバマ大統領の真の姿が、見えてくるような気がするのだが、考えすぎだろうか??