イランはアメリカを侮ってはいけない

2009年3月21日

 バラク・オバマ大統領はイランの新年に当たる、ノールーズの祭りの時期を選んで、イランへの友好的メッセージを送った。アメリカとイランは新たな関係を、構築すべきだというものだった。

 このバラク・オバマ大統領のメッセージに対して、イラン側は警戒心を残しつつも、歓迎の意向を示している。

 バラク・オバマ大統領は完全な核施設に対する査察を、イランが認めるのであれば、平和利用の核開発は認める、という方向を示している。これは、ブッシュ大統領の時代には無かった、アメリカの新しい立場であり、バラク・オバマ大統領のイランに対する、直接対話の意向とあわせ、大きな方針転換だといえよう。

 問題は、このバラク・オバマ大統領の呼びかけに、イラン側が何処までアメリカの満足する答えを、出せるかにかかっているということだ。もし、いままでと同じように、強気の発言だけを繰り返すようでは、取り返しのつかない状況が発生することも、ありうると考えるべきであろう。

 アメリカにとっては、今回のイランに対する、平和的な関係構築への呼びかけは、大きな譲歩であると同時に、政策の大転換であったと言えよう。それだけに、イラン側もそれにふさわしい変化を、示さなければならない、ということだ。

 アメリカにとって、中東地域情勢に対する関心の度合いは、世界の他の地域以上であり、その中東地域でイランが今後も不安定化(イランの影響力の拡大)を考えるのであれば、早晩、アメリカとイランは衝突することになろう。アメリカ軍がこれまで、イラクで苦しい状況に置かれてきた一因は、イランのイラクに対する関与が、あったことも否定できまい。

 先にもお伝えしたように、モロッコ政府はイランによる、内政への介入に業を煮やし、外交関係を絶っている。それだけイランのモロッコに対する関与が、明らかだったということであろう。モロッコではイランの支援を受ける、イスラム原理主義者の活動が、目立ってきていたということだ。

 同様に、ヨルダンやサウジアラビアでも、イランの関与の影がちらついている。バハレーン、クウエイトも同じように、イランに対する不信と不安を抱いている。ドバイが経済不振の中で、イラン側から西側製品の輸入中継地からはずすと言われたのも、経済を通じてのドバイに対する、干渉と言うことではないのか。結果的に、ドバイの経済はますます、悪化の傾向にある。

 レバノンのヘズブラやパレスチナのハマースは、共にイランの援助を受ける組織だが、これら二つの組織はそれぞれの母体(レバノン政府、パレスチナ自治政府)に対して、大きな影響力を持つに到っていることも、アメリカにとっては不快であろう。

 加えて、イランが南米の幾つかの、反米的国々との関係を強化していることも、アメリカにとっては危険な兆候、と言うことになるのではないか。イランは、いまが世界政治に大きな影響力を持つチャンス、と考えているのかもしれないが、冷静にネガテイブな要素も考える時期に、来ているのではないか。

 イランの大統領選挙で誰が当選するか、いまの段階では断言できないが、改革派と言われている、ムサビ候補が当選した場合には、アメリカに対する明確な、友好的シグナルを送るべきであろう。

たとえば、1年間のウラニューム濃縮停止のような、思い切った提案をすべきではないのか。そして濃縮停止期間は、アメリカのイランに対する対応次第で、延長可能であるとすれば、アメリカもそれ相応の対応を、イランに対して、してくるのでは無いか。