イランの中東台頭とヨルダンの不安

2009年3月19日

 パレスチナのハマースが、ガザでの戦争を生き延び、次第にパレスチナ社会内部で、支持を高めている。現段階で、パレスチナ自治政府議長選挙を実施すれば、現在の議長マハムード・アッバース氏が敗北し、ハマースのイスマイル・ハニヤ氏が当選するだろう、という予測がもっぱらだ。

 同様に、レバノンでも2006年の戦争を生き延びたヘズブラが、現在では強い政治勢力となり、レバノン政界に君臨するようになっている。

 これらハマースやヘズブラは、いずれもイランの支援を受ける組織だ、その組織がレバノン国家に対し、あるいはパレスチナ自治政府に対して、大きな脅威の存在になってきているということは、イランの存在が中東各国にとって、払拭できない脅威になってきている、ということであろう。

 モロッコがイランとの外交関係を断絶し、バハレーンが国内混乱に向かい、クウエイト議会が混乱している状況は、どう考えてもイランの影が、ちらつくというものであろう。

 同様に、ヨルダンもまたイランやイスラム原理主義の脅威に、さらされ始めている。最近、ウサーマ・ビン・ラーデンの名前で、アルカーイダが出した声明では、ヨルダンを拠点に、イスラエルに対する武力闘争を展開しろ、という部分があった。

 もちろん、ヨルダン政府はイスラエルを危険にさらすようなことは、容認できない。かつて、ヨルダンは1970年に起こったブラック・セプテンバー事件で、イスラエルによって王家を守ってもらった、という負い目もあるのだ。

 しかし、もしヨルダン王家、政府がパレスチナ闘争で、後背基地を提供しなければ、今後、ヨルダンの体制そのものが、危険にさらされるということも、警戒しなければならないだろう。

 ヨルダンのアブドッラー国王が、最近、パレスチナ問題の解決を、欧米諸国に対し、強く訴えているのはその不安からであろう。