二つの気になるニュース・イスラエルの将来

2009年3月15日

 気になる二つのニュースが伝えられている。第一のニュースは、CIAのまとめた報告の衝撃的な内容「イスラエルが20年後には消滅する」というものであり、もうひとつは、イスラエルのオルメルト首相が言った「大イスラエル構想は死滅した」という内容のニュースだ。

 CIAの報告書の中で指摘されているのは、多くのイスラエル人が二重国籍を所持しており、アメリカやヨーロッパ、ロシアに将来移住する気があるということだ。二重国籍を有していないイスラエル・ユダヤ人たちは、いまアメリカやヨーロッパの国籍を取得することに、躍起になっているというのだ。

 他方、パレスチナ人はどんどん子供を生んでおり、イスラエル・ユダヤ人とイスラエル・パレスチナ人の人口バランスが、将来、逆転することが明確になっているということだ。

 そうなれば、残されたイスラエル・ユダヤ人も、イスラエルを離れることによって、自身の安全を確保しようと考え、イスラエルからの脱出は本格的なものになろう、というのがCIA,報告の骨子だ。

 もうひとつの、オルメルト首相の「大イスラエル構想は死滅した」という発言の内容は、イスラエルが周辺の土地を収容し、他国家を侵略してイスラエル領土を拡張して行くようなことは、世界が認めない方向に向かっていて、現実的ではなくなったというものだ。

 オルメルト首相は、ヨルダン川から西に広がる土地は、神がユダヤ人に約束した土地だということを認めながらも、既にそうしたシオニズムの根本思想の実は不可能であり、二つの国を作ることによって、共存を考えなければならないという、結論に達したというものだ。

 オルメルト首相は、時計はイスラエルの都合のいい方向に向かって、時を刻まなくなったとも、発言している。

 レバノンのヘズブラとの戦争における精神的敗北、それに続くハマースとの戦争における精神的敗北は、世界中の非難をイスラエルに向かわせると同時に、イスラエル国内に政治的分裂と、国民の間に大きな将来への不安を、固定してしまったようだ。(ここで言う精神的敗北とは、ヘズブラもハマースも、イスラエルが徹底的に攻撃を加えたものの、消滅することは無く、戦争後ますますその存在を、強固にしたということだ)

 イスラエルの存在基盤を、これまで支えてきてくれたアメリカやイギリスも、現段階では自国の利益を優先し、必ずしも無条件でイスラエルの主張を、支持してくれる状態にはなくなっている。

 オルメルト首相は首相の座を離れるにあたり、最も強くイスラエル国民に訴えておかなければならないことを、はっきりと語ったのであろう。そのオルメルト首相の発言に対して、イスラエル国民が正しい判断を下すか否かは、イスラエルの将来を決定付けてしまうかもしれない。現在、イスラエルはそこまで追い込まれ、苦しい立場に立たされているということではないか。