3月の初頭に、アメリカの新国務長官ヒラリー・クリントン女史が、トルコを訪問した。先のダボス会議での、エルドアン首相のイスラエル非難発言は、全くこの訪問に、影響を与えなかったようだ。
それどころか、ヒラリー国務長官はトルコを離れる前に、4月初頭にオバマ大統領が、トルコを訪問する予定であることを伝えている。一体、相次ぐアメリカの要人のトルコ訪問は、何故行われるのだろうか。
述べるまでもない、トルコはアメリカの中東政策の、要の国家になったということだ。
これまでは、エジプトがアラブの盟主として、主役を張ってきていたのだが、ムバーラク大統領の高齢化もあり、エジプトは当分の間というか、次の大統領に代わるまで、中東地域では主役を張れない、とアメリカが判断したということではないか。
アメリカにはこれから、中東地域で解決していかなければならない問題が、山積している。第一が、イラクからのアメリカ軍の撤退であり、第二はイランの核問題への対応であり、第三はアフガニスタンへの対応であろう。
もちろんパレスチナ問題もあるが、これはどうにでもごまかしのきく問題であろう。当分の間はガザの復興支援金を出せば、それで対応が済むとアメリカは考えている、ということではないのか。
イラクからアメリカ軍が撤退するのは、来年の9月までとなっているが、今年中にも大幅な撤退が、行われることになっており、トルコ領土を経由して行うよう、アメリカはトルコ政府に要請している。
イランとの核兵器開発をめぐる問題でも、トルコがイランと一定の、良好な関係を維持していることから、アメリカ政府はトルコに対し、イランとの仲介を、要請することにしたようだ。
アフガニスタン問題は、イランとの関係が直結する問題であり、複雑な状況にあるが、アメリカはタリバンの中の穏健派との、取引を提案している。タリバン側はこれを、アメリカ側の敗北宣言と受け止めており、今後、強気の対応をしてくることが予測される。
そこでも、トルコによるタリバンとアメリカとの、仲介工作が期待されよう。もちろん、アフガニスタンにはトルコ軍も駐留していることから、トルコはできるだけ早く、アフガニスタン問題を解決するか、手を引きたいと考えているのであろう。
ヒラリー国務長官とオバマ大統領が、続いてトルコを訪問することになったのは、こうしたアメリカの事情からであろう。そのトルコの重要性を、日本はどの程度まで、正しく評価しているのであろうか、不安が浮かぶのだが。