2月にトルコの高原都市アバント市で、重要な国際会議が開催された。欧米からの参加者も含め、イラク・クルド地区からも代表が参加する、クルドとトルコの今後を討議する会議だった。
汎アラブのアルハヤート紙は、この会議の重要性について気がつき、短いながらも、この会議に関するニュースを伝えていた。つまり、トルコはイラクのクルドとの関係を、今後大幅に改善し、ある種のコモン・マーケットのようなものを、創って行く考えのようだ。
そのためには、まずトルコ人とイラクのクルド人が、自由に往来できるようにするということが必要であり、トルコ側はイラクのクルド地区のエルビル市に、近くトルコ領事館を開設する方針だ。
イスタンブールからは、既にイラク・クルド地区への、定期便の乗り入れが行われているが、加えて、トルコ東部のクルド人が主に居住する、デヤルバクル市とイラクのエルビル市との間に、定期航空便を飛ばす考えも、明らかにされた。
そうなると、トルコのクルド人たちも、経済的メリットを受けることが、出来るようになろう。イラクのクルド人実業家が、この地域に投資することが、拡大するものと思われるからだ。多くのトルコ・クルド人とイラク・クルド人が親戚関係にあることも、見逃せない事実だ。
イラクのクルド地区には現在、トルコ側の民間組織が設立した専門学校や、高校、大学が存在し、本格的な教育活動を行っている。もちろん、トルコ語は必須科目になっているのだ。つまり、将来的にはトルコ語がこの地域の、共通語になる可能性があるということだ。
トルコ企業のイラク・クルド地区への進出が、大手だけでも500社に及び、小規模なものまで含めると1000社を超えているといわれている。こうしたことがトルコの経済状態を、二重構造にしているのであろう。
つまり、公式発表には全く顔を出さない、非公式なアングラ資金の動きが、結構な金額に上っているのだ。金融危機で世界が苦しむなかで、トルコが意外に強気でいられるのは、イラク・クルド地区との特別な関係に、あるからなのかもしれない。
このトルコとイラク・クルド地区との関係の進展は、トルコ国内の反体制組織PKKの立場を弱めてもいる。イラク・クルド自治政府がPKKの活動を、正式に認めなくなったからだ。
これまでも、クルド自治政府はPKKの活動を、認めないとは言いながら、黙認し、資金や武器を提供していたのだが、ここに来て、資金も武器の提供も止まり、PKKメンバーのクルド地区での存在そのものが、許されなくなっているのだ。
トルコ政府はPKKのメンバーでも、トルコ人殺害に加わっていなかった者に対しては、何の罪も問わないという立場を示し、社会復帰するよう、投降を勧めている。そのことを印刷したビラが、PKKの潜伏地域にばら撒かれているが、PKKの意幹部は、この紙には毒が浸み込ませてあると言い、見ることを禁止しているという話しだ。同時に幹部たちは、PKKのメンバーに対し、トルコのテレビやラジオ放送を見ることを、禁じているということだ。
それでも、トルコの新しいPKK対応のニュースは、PKKのメンバーに届き、投降者が最近、特に増えてきているということだ。そうなれば、トルコが進めようとしている、イラク・クルド地区との一体化は、ますます現実のものになっていくということであろう。