エジプトとトルコを訪問して、幾つかの共通した社会現象に気がついた。両国ではいま、迷信にも通じるような、イスラム教と直接結びつかない、現象が見られる。
両国では、スカーフをかむる女性が増えている。なかでも、エジプトでは老若を問わず、スカーフを着用する女性が増え、その割合は90パーセントとも95パーセントとも、言われるようになった。
トルコでも与党AKP(開発公正党)の幹部が、宗教熱心であることから、スカーフの着用を昨年、強引に自由化し、ついには、これに反対していた野党の、CHP(世俗政党)支持者までもが、スカーフを着用する傾向が、増えているようだ。
それと同時に、イスラム教徒を直接結びつかない魔よけ、おまじない、といったものごとが、大衆の間で広がっている。
トルコでは、以前からあるのだが、他人の嫉妬の視線を避けるということで、ナザルボンズという青と白黒で描いた目玉のようなものが(通常ガラス細工)、最近になって、特に広く出回るようになった。
トルコではまた、日本の神社をまねたのであろうか、おみくじを売っているし、祠のようなものが造られ、そこで願を掛ける者が、増えてきているということだ。
こうしたことが、どうして起こっているのかと、エジプト人の友人に尋ねたが、答えは分からない、というものだった。同様にトルコの友人に聞いてみても、やはり答えは、分からないだった。
人間、なかでも女性は男性に比べ、本能的な直観力が鋭いといわれているが、あるいは、トルコの女性もエジプトの女性も、これから起こるであろう、世界的な不安定化への変化を、敏感に感じているのかもしれない。
社会が不安定化すると、イスラム社会では宗教的に問題があるとみなされる、スカーフの着用拒否は、暴力で対応される危険性が増すのだ。こうした傾向は、宗教上の記念日や、ラマダンでも見られる現象だ。
世界の経済学者や政治学者が、今後の世界状況を予測できなくとも、彼女らには本能的に、それが感じられているのかもしれない。その意味では、日本の女性は本能的な直観力が、弱くなっているのかもしれない。